むっしゅたいやき

阿賀に生きるのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

阿賀に生きる(1992年製作の映画)
4.0
新潟県阿賀野川流域。
川に寄り添い、身を寄せ合いながら生きる人々を捉えた、ドキュメンタリー作品である。
佐藤真。

本作は全国の有志による、寄付のみで撮られた作品である。
また、撮影スタッフが三年もの間、阿賀野川上流域で共同生活を送りながら、現地の方々の「普通の暮らしぶり」をフィルムへ収めたと云う点に留意されたい。
人々が形式的な、しゃちほこばったカメラ向きの顔では無く、時には厳しくも柔和で、活き活きと日々を生きる様が見事に撮影されている。

阿賀野川と言えば、新潟水俣病を忘れる訳には行かぬであろう。
本作でも其れは大きな要素として事の経緯、経過(撮影時点での)が収められてはいるが、飽くまで要素であり、作品の主は何と言っても「阿賀の人々の生き方」であろうかと思われる。
115分の間、我々は撮影スタッフを通し、阿賀の人々と日々の暮らしを共にする。
其処には笑い、歌、過酷な農作業、舟作りや鈎釣りと云った、自然と向き合う暮らし振り、そして何より夫婦にせよ仲間にせよ、睦まじく充足した生き方が在る。

本作に撮られる人々は、平均年齢は恐らく70代後半、凡そ歳を召された方々である。
腰も曲がり、満足に歩けない様子も多く映される。
けれど其の顔からは、例え大病を得ようとも川に頼り、寄り添い、川と共に生きて来た者の誇りと満足感が見て取れる。
また、岩場の雪陰が白映えて、白と紺色に彩られた情景は、特筆に値する。

本作の人々は皆、とても良い笑顔をしておいでである。
日々を忙しなく、死んだ魚の様な目をして送る人々に、是非鑑賞されたい作品である。
むっしゅたいやき

むっしゅたいやき