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レクイエム・フォー・ドリームのkuuのレビュー・感想・評価

3.8
『レクイエム・フォー・ドリーム』
原題 Requiem for a Dream .
製作年 2000年。上映時間 102分。

斬新な低予算SF映画『 π 』で世界を驚かせたダーレン・アロノフスキー監督が孤独と背中合わせに生きるごく普通の男女が破滅へと落ちていくさまを鋭く描いた衝撃のアメリカン作品。

テレビを見るのが何より楽しみな中年未亡人サラは、ある日テレビ番組への出演依頼の電話を受け、お気に入りの赤いドレスでテレビへ出るためダイエットを始める。一方、息子のハリーは恋人マリオンとのささやかな夢を叶えたいと麻薬売買に手を染める。
季節が変わり、赤いドレスが着られるようになったサラはダイエット薬の中毒に、麻薬の商売がうまくいかなくなったハリーとマリオンは自らがドラッグの常用者となっていた。。。

今作品を好むか嫌まないかにかかわらず、心に残る印象を与えるのは間違いない作品と云える。
その印象はおそらく、気持ち悪く、恐ろしく、暗いもの。
今作品を見た多くの人は、ジャンキーについての映画だと云う。
彼らは夢に没頭し、夢は彼らが本当に幸せになれる唯一の場所。
彼らにとって、現実はハイになっている間に経験する世界とは比較にならない。
そして、その感情が消えた後、彼らはドラッグを通して、自分が幸せを手に入れた夢を再現するために多大な努力をする。
また、そこに彼らの弱さがあり、現実世界に立ち向かうにはあまりにも弱く、それはまた意識のある人生にひれ伏し、彼らはドラッグによって捕えられている。
今作品は、色んな見方はあるやろけど、見終わった後に、『嗚呼、イカした映画や』とか『善き映画やった』と云うような作品で括るのは難しいし、またホラー映画でもないが、その恐怖は、超自然的な存在の擬人化ではなく、実在の人物の陰惨な描写にあるため、ホラーより薄気味悪いかもしれない。
視聴者が麻薬摂取の抑止力に繋がる作品と肯定的に取れなくはないが、殺人犯や強姦犯が最終的に死刑や懲役になることを描いた暴力映画はめちゃあるし、映画のお陰で犯罪率が下がるとは思えないし、これを観て薬中が減るとは云えないけど。
しかし、啓蒙の為と学校の先生が子供にドラッグをしないように説得するよりも、効果は期待できるような作品なんちゃうかとは思います。
全編に登場するキャラは、二次的な役柄や周辺的な役柄も含めて、大きな共感を得ることは難しいとは思いますが、主要な登場人物(4人)は皆、さまざまな形の夢の世界に住んでおり、その夢の世界は、混乱した現実よりもずっとやりがいがあり、安全であることが証明されている。
様々な形の逃避と精神的な暗示が、タイトルが指す夢であり、この逃避は、若さ、未来への希望、幻覚的な現在、心理的な病気、薬物乱用、そして最後にテレビについての考察という形で形づくられている。
監督はテンポとスタイルは、今作品が提示する映画体験に不可欠なものやと理解してる。
巧みなスリラー映画やサスペンス映画のようなテンポの良さでした。
冷蔵庫や、その他いくつかのぞっとするようなシーンは、ホラー・ジャンルの要素さえも取り入れることができる、映画製作者の能力を例示してると思います。
今作品は、謂わば実験的な撮影と編集のプラットフォームでもあり、時にはやりすぎの感も否めないが、この実験的な試みがうまく機能していることが、この映画製作者の証とも云えるかな。
冒頭には素晴らしいステディカムワークがあり、様々な形の薬物摂取に対する感覚的なメタファーが繰り返され、非常によく伝わってきた。
音楽は、どちらかというと微妙な表現ですが、テンポをうまく調整する役割を果たしてたかな。
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