青二歳

皇帝の鶯の青二歳のレビュー・感想・評価

皇帝の鶯(1948年製作の映画)
5.0
アンデルセン“小夜鳴鳥”をトルンカがアニメーション化。清の幼い皇帝を慰めるナイチンゲールの歌声を表現するためいつも以上に音楽に力を入れていて、作曲家と共同作業で製作しています。音楽の美しさに合った見事な音楽アニメーションです。

トルンカの長編はどれも音楽にこだわったものばかりですが、今作は小夜鳴き鳥の“歌声”が物語の核とあって、とても練られたものになっています。
長編アニメーションであっても、トルンカは人形に“喋らせない”(口を動かさない)。“バヤヤ”は歌劇風な歌で場面転換がありましたが、今作では言葉による説明や感情などはすべてナレーション。人形たちはマイムのみ。人形たちの表情を照らすのは音楽です。
川本喜八郎のような表情豊かな陰翳を持つ人形とは違って、トルンカの人形はかなりデフォルメされたものなので、正直そこまで表情豊か…とはお世辞にも言えません。しかし見ているうちに"人形たちの世界"に没入してしまい、徐々に皇帝の淋しさに共感してしまう。彼の淋しさや焦燥を表現する音楽が本当に美しく、人形たちの表情をどんどん豊かにします。夜鳴き鳥の音楽も人の心を慰める鳴き声として、なんとも言い難い説得力があります。
素晴らしい作品でした。

東欧人の描く清朝は…オリエンタリズムに満ちた仕上がりで、日本人からすると珍妙過ぎて清ではない何処か別の世界に映ります。原作に登場する“日本人”のところも今作だとハテ?という感じ。
でもこれが余計にアンデルセンの描いた"どこか遠い国"らしくて、そのお伽話の世界にたっぷりと浸れる。
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