140字プロレス鶴見辰吾ジラ

Mr.インクレディブルの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

Mr.インクレディブル(2004年製作の映画)
4.0
「アメリカン・ビューティー」を下地に置いたような家庭の危機やミドルエイジクライシスの主人公をミニマルに伝えつつ、スペクタリティのあるスーパーヒーローパワーの影のラインに寄り添ってブラッド・バード流のガジェットの洪水の如きつるべ打ちされるスタイリッシュかつレトロ特撮(いわゆるサンダーバード系列)の映像の羅列にクラクラ。ヒーローのスーパーパワーに対してのリミット不在のアメコミマナーを下地にしているがゆえの、その能力の抑制をそのまま中年の危機に陥ったロマンス偏りな主人公を父親として傘を広げさせるキャラ配置に感心。スーパーヒーローが危険視された世の中において、異常は異端とされ”一般化”に支配された中で、夢見心地の中年の危機を継続して入れてくれるからこそ、「アメリカンビューティ」的な夫のシェイプアップシーンwithスーパーヒーロー仕様が滑稽に映る。アニメならではの抑制が解放されたときのアクションの羅列や映像の幅広さは文句なし。ヴィランが無能力者として、嫉妬と逆恨みに歪んでいながら、無能力を知恵と工夫で切り開こうとした、実はピュアなヒーローへの憧れが焦げ付いたものというのが皮肉であり、現実の痛みである。抑制されているがゆえのクライマックスシーンでの家族=ヒーロー集結の演武構図のワクワク感は抜群だが、ラストバトルの提供可能なスケール範囲に対して、動きがリモコンのボタンを巡る小さいアクションになってしまったことにカタルシスの爆発力が足りず残念。とにかく清々しいまでのガジェットのヴィジュアルイメージのキレ味は最大級の幸福である。