櫻イミト

越後つついし親不知の櫻イミトのレビュー・感想・評価

越後つついし親不知(1964年製作の映画)
3.5
今井正監督が「武士道残酷物語」(1963)でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した直後の作品。水上勉の同名小説の映画化。

昭和12年。越後糸魚川筒石の寒村で、京都伏見の酒蔵へ出稼ぎに出た夫(小沢昭一)を待つ若妻おしん(佐久間良子)は、近所の権助(三國連太郎)に襲われ。。。

性暴力に泣き寝入りする悲劇が閉ざされた村を舞台にじっくりと描かれる。物語は転ずることなく一直線に進むが、終盤で意外な場面があり映像的クライマックスとなっている。

果たして、現代の価値観で本作をどのように受け止めるか?水上勉の原作は”女性の悲しい運命と情感”が評価されているようだが、個人的には日本の反戦映画と同じニュアンスの”反・性暴力映画”として受け止めるしかなかった。

北陸海岸部の寂漠とした風景と終盤の意外な場面は、映像が印象深く記憶に残りそう。

主演の佐久間良子は当時25歳。最近の女優でこの役がハマる女優は思い当たらない。もちろん彼女の才能と個性によるものだが、本作から現在まで60年の間に日本の女性像が変化したのだと再認識した。
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