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ラブンのmeraのネタバレレビュー・内容・結末

ラブン(2003年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

『タレンタイム』『細い目』に続いて観たヤスミン監督の映画。これがヤスミン監督のデビュー作。

ラストの夢の大団円シーンに、毎回超常的な救いのエピソードが差し込まれる原型はデビュー作にもうあったのだなと感じました。

いろいろもちろん、魅せるということについては荒削りなんだけれど、言葉よりもエピソードで語らせる感じとか、魅力的な登場人物とか、誰かと誰かの愛情を描く描写とか、ところどころにのちの作品につながる魅力があった。

どうしようもない悪、というか、だめな人間を描く感じはきつかった。最後に制裁を加えていたけれど、彼が改心するとは思えない。だめな人間を描くのって難しいんだなと思った。長編の遺作となった『タレンタイム』でも、だめな人やつらい現実は描かれるけれど、登場人物たちの魅力がもっともっと膨らんで、それを魅力が凌駕するので、生きることを肯定される気持ちになる。描いているものが同じでも、描き方で伝わり方はまったく変わる。

よく作家の処女作にはすべてがつまっている、というような事が言われるけれど、映画監督もそれはあるのかなあ。『ラブン』には、その萌芽を感じました。

未見の作品はあと4作。円盤も配信も切望中ですが、まだかなっていない監督なので、またどこかで監督の全作公開の特集をやってほしいです。『タレンタイム』がコロナ禍で仮設の映画館で公開されたのはうれしかったです。この機会に、まわりの映画好きな知人たちに観てもらうことができて、なかには生涯ベスト3に入る映画に出会えたと言ってくれた人も。

『マレーシア映画の母 ヤスミン・アフマドの世界 人とその作品、継承者たち』も買いました。とても読みごたえがあって、おすすめです。ヤスミン映画ファン必携。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909151216
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