かずぽん

空中レヴュー時代のかずぽんのレビュー・感想・評価

空中レヴュー時代(1933年製作の映画)
3.1
監督:ソーントン・フリーランド(1933年・米・89分・モノクロ)
原題:FLYING DOWN TO RIO

フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが初めてコンビを組んだ作品。二人の華麗なダンスは、当時経営難だったRKOが盛り返すきっかけとなり、1939年までの間に9作品で共演し、ドル箱ヒット作品となる。

「空中レビュー(revue)」って何?と思いながらの鑑賞だったが、それが分るのは終盤になってから。
本作では、意外にもアステアは主演ではない。アステアの役どころは、「ヤンキー・クリッパーズ」というバンドのアコーディオン奏者だった。バンドリーダーのロジャー(ドロレス・デル・リオ)とは友人で、ジンジャー・ロジャースもバンドのメンバーで歌手という役どころだった。
本筋は、リーダーのロジャーとブラジル人の令嬢・ベリニャの恋物語かと思いきや、彼女にはフリオという婚約者がいたという三角関係の展開。
ロジャーは「女たらし」を自称するような男で、バンドを指揮する間も女性客に色目を使い、客席に見つけたベリニャをフロアのダンスに誘う。その間、アステアが指揮を代わっていた。まあ、この三角関係の行方は「観てのお楽しみ」ということで。

アステアとロジャースの歌声も披露されるが、二人の息の合ったダンス ― しかも「オデコ」をくっつけて踊るカリオカは陽気で楽しい。二人が踊る円形の白い舞台と思ったのは、実は数台の白いグランドピアノを円形に配置してあり、その円周にはピアニストが座って演奏していた。
次に男女ペアのダンサーたちが大勢登場し、カリオカ・ダンスの群舞となる。
そして、終盤の「空中レビュー」のシーンは、ホテルでの興行を邪魔する三人組に対抗する苦肉の策だった。「ホテルを会場に使えないなら、いっそホテルの上空をステージに」というアイデアだった。
複葉機の翼の上でのレビューを指導するのはロジャースで、翼からダンサーたちが落ちないようにする数々の工夫がオモシロイ。(もちろん、レビューシーンは合成)

ラブコメよりも、アステアやロジャースのダンスシーンが印象に残るという現象に、RKOは、この二人の実力を見くびったことを後悔したのか、二人のダンスが大勢の観客を呼べると踏んだのか、次回作からは二人が主演となった。
娯楽に徹した古き良き時代の映画。しばし浮世のしがらみを忘れて、画面の中の世界に埋没出来る。こういうのが、映画の役割の一つなのかも知れない。楽しませてもらった。
かずぽん

かずぽん