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百合の伝説/シモンとヴァリエのMTMYのレビュー・感想・評価

4.0
「初めての愛。永遠で、最後の愛。」
宗教上許されない愛の中に苦悩する3人の青年たちを描くという、一見よくありそうなお話。…しかしこの作品がその単純さを越えて鑑賞側を強く魅了するのはやはり、「今は司教の男(ビロドウ)に、自分の過去の懺悔を名目に彼を刑務所に呼んだ男シモンが突如演劇を通じて繰り広げる"復讐劇"」という一捻りある設定だろう。

男子の刑務所ということもあり、展開される過去の再現劇のキャラクターはすべて男。
劇中の登場人物である"マダム"も"母親"もみんな刑務所の男が演じるが、これが全くと言っていいほど違和感がない。

40年前の青年時代の話を
40年後 刑務所で演劇風に再現されるストーリーだが、ちょくちょくその劇と空想世界が絡み合ってちゃんとした1つの世界(ドラマ)になっているのが
素晴らしいし、美しい。

保守的な家庭で育ちつつもシモンを愛するビロドウ、
そして理解のある半母子家庭で育ち、同じくシモンを愛する白百合ことヴァリエと、
自分の同性への愛への目覚めに酷く困惑し、パリの貴婦人と一緒になることでその愛を断ち切ろうとするシモンによる、
3人の歪な三角関係の
悲しい過去の物語が軸であるが、

その演劇の中のストーリーにも、
「今気づいたわ…愛が最大のウソだということを…」
のように、"ウソつき" の事にも皮肉的に触れていて、じわじわと司教ビロドウを責めていく仕組みとなっていて興味深いのだ。

極めつけはやはり美男子たち。
愛を語るにしても舞台ゼリフを借りるしかできないような彼らの姿や、社会的に窮屈な愛の在り方には唸るしかない。

ラストがまたいいということで。

Never! Never, Bilodeau.

と言ってナイフを手渡すシーンが。

余韻がすごい。
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