ヤマト

オアシスのヤマトのネタバレレビュー・内容・結末

オアシス(2002年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【 僕らだけのオアシス 】
 良くも悪くも自由な坊主頭のジョンドゥ(ソル・ギョング)が、憎めないです。一つひとつの動作や服装をみていると、愛嬌すら湧いてきます。鼻をすする癖が、移りそうになります。
 ケンカっ早くて、何をするにも厄介者扱いなジョンドゥですが、情に熱い一面には心が温かくなります。どんな濡れ衣を着させられようと、どんな仕打ちを受けようと、大切な人のことは絶対に売りません。絶対に自分が優位に進む展開には持ち込みません。不器用とも見れますが、これがすごくカッコいいのです。ラストの粋な伐採もそうですが、ジョンドゥの思いやりは、その他大勢から見たら完全に奇行です。分かる人が分かればいいという思いやりフィルターなるものが、ジョンドゥの世界には存在するのです。
 
 ムン・ソリの演技が圧巻です。それこそ衝撃的です。こちらもジョンドゥと同じく、周りから完全に誤解されています。彼女は、周囲の“かくあるべし”という檻に閉じ込められていて、観ていてすごく不自由です。ハンディを背負っている彼女を周囲は過剰な過大解釈をします。究極のプライベートといえる愛の営みでさえ、周囲のお節介によりぶち壊されてしまいます。
 随所に自由になってジョンドゥと楽しむ世界が映し出されます(これすごく良かったです)。もちろんそれは、彼女の妄想であり夢である、“もしも”の世界です。しかしそれが恋人との口喧嘩だったり、ふざけ合いだったりするのです。一見、誰もが出来うる日常のやり取りで、人によっては面倒くさいやり取りでしょう。しかしそれが彼女にとっては長年の夢。それだけで自分の立場に感謝できます。私の当たり前は、人によっては当たり前ではないからです。

 僕たちだけが知る、楽しくて美しい世界。それが、オアシス。他の人たちは知らなくていいし、知ることなんてできやしない。ただ僕たちだけが、知っていればいい。
ヤマト

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