もびえ

トニー滝谷のもびえのレビュー・感想・評価

トニー滝谷(2004年製作の映画)
4.4
大傑作

トニー滝谷は元々自分は孤独なのだと、それが普通なのだと思い込み、妻の存在(幸せだった記憶)を消すことでしか生きていけなかったのだろう。

空虚な部屋を埋め尽くす妻の服。それはトニー滝谷の空っぽな心に妻が満たしてくれた何かに見えた。それを妻の死後、全て処分することでやはり最初から何もなかったのだ、と、そう思うことにしたのか。

トニー滝谷は妻に「服を買うのを控えたらどうだ」と進言した。お金の問題より本当に必要なのか、そして流石に行きすぎていると感じたからだ。トニー滝谷は内心怖かっただろう。勇気を振り絞った発言にみえた。そしてその後すぐに妻は亡くなる。心底後悔したはずだ。だからこそトニー滝谷にとって服は、妻の唯一残したものだが、とってはおけないものだったのだ。

イッセー尾形の静かな演技、そこに入り込む宮沢りえのチャーミングさ、そして坂本龍一の音楽が素晴らしかった。(主題は「solitude」孤独)

残された男を描いた作品という点では、「ドライブマイカー」と共通している。語りも西島秀俊だったのか。最後の一節を本人達に読ませる演出も秀逸でした。

村上春樹の小説は全然読んだことないが、「ドライブマイカー」や「風の歌を聴け」しかり、世界観が物凄く好きなのだと思うので読みます。
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