安堵霊タラコフスキー

アメリカ アメリカの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

アメリカ アメリカ(1963年製作の映画)
3.7
アカデミー賞候補にもなったのにDVDがリリースされておらずVHSのレンタルもできない幻の作品と化していて、BSプレミアムで放送されてようやく拝むことができたのだけど、ネオレアリズモらしい演出の数々やハスケル・ウェクスラーの陰影が強くて生命力の感じられる撮影は非常に良かった。

でもギリシャ人やトルコ人が英語を話している違和感は始終拭えなかったし、どこの世紀末だってくらい人間の屑(特に主人公が旅で最初に出会ったあの巨漢は屑すぎて死んで清々した)が大半の世界観にも疲労感を覚えてしまった。

主人公が屋敷で過ごしている中盤が会話主体で退屈だったのも残念だったが、それを超えての船のシーンではドキュメンタリー映画からキャリアをスタートさせたウェクスラーの真骨頂と言える映像が数多く見られ、この後半部だけでも見た甲斐があったと思えた。

スター性が無いから日本でソフトがリリースされていない理由もなんとなくわかるけれど、エリア・カザンの演出以上にハスケル・ウェクスラーの撮影が光る一品として一見の価値はある映画だった。