ヤマト

春の日は過ぎゆくのヤマトのネタバレレビュー・内容・結末

春の日は過ぎゆく(2001年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【 去る春追うな。また春来たり 】
 その瞬間は心地よく最高の気分。心にもずっと残る。ただ、それを味わえるのはその時だけ。儚いといえば儚いが、その刹那の瞬間を味わえると思えば、それは美しい。そう考えると恋と音はよく似ている。そう言えば本作の題材は音声技師であった。
 失恋をした時に観るべき映画である。儚さに思わず胸が締め付けられる。愛した人が次第に離れていき、別の人と一緒になる辛さは筆舌に尽くし難い。
 好青年、サンウ(ユ・ジテ)は失恋してとことん落ち込み、ひたすら悲しむ。酔ったし、泣いた。生活と仕事もままならなくなった。「情けない」と思える(言える)のは、失恋したことのない人だけである。さすがに相手に執拗に迫るのはNGだが。
 やっぱりイ・ヨンエ。透き通るような美しさには思わずニヤけてしまうし、演技も素晴らしい。これはユ・ジテにも言えるが、“酔っぱらう”演技がすごくリアルだった。否、役作りのために本当に酔っていたのかもしれない。それに私が酔いしれたのは言うまでもない。自動販売機の前からサンウを引っ張り、つま先立ちでキスするシーンは一発でノックアウトである。そういえば終盤、元カレのサンウとその親友が、「前の彼女(つまりはイ・ヨンエ)なんて、すぐに白髪とシワだらけさ」といったやり取りをしていたが、当時の作品からおよそ20年経ったイ・ヨンエの姿を見てみると…。男たちの愚痴は盛大に外れたと言える。
 恋を春に例えると、暖かくて心地がよくてそれは幸せだ。しかしずっとは続かない。夏や秋、冬が来るからだ。儚いといえば儚いが、その刹那の瞬間を味わえると思えば、それは美しい。そう考えると恋と季節はよく似ている。春を味わったら、とことん冬を味わえばいい。きっとまた春が来るから。

 
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