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友だちのうちはどこ?のwigglingのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
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ほんとうはユーロスペースの特集上映「キアロスタミ全仕事」で全作品コンプしたかったんだけど、地方者にはそれも厳しく。ほどなくして京都みなみ会館でも追悼特集が行われることになり、念願の再鑑賞が叶いました。
大好きな『桜桃の味』がなかったのは残念だけど、ジグザグ道三部作を続けて観れるのが最高に嬉しかった。

その三部作の一作目にあたる本作、たぶん最初の日本公開時に観て以来だと思う。
確かシネシャンテだったような。あの頃は本当に素晴らしい作品をかけてくれてて、毎週末欠かさず通っていたものです。

困っている子供の表情がまったく演技ではないことに感銘を受けたのを強烈に覚えています。それまで観たどの映画とも違う、それはリアルな映画ではなくリアルそのものだと思った。
子供を本当に困らせる、本当に泣かせる、という鬼のような演出スタイルだったとあとで知り、そのことにも映画というものの業の深さを感じたものです。
そんな非道い監督が作った作品が優しさに満ちているのも面白いところで。

アスガル・ファルハーディー監督作品のような現代イラン映画とは違って、この頃はまだ子供は労働力だったことがうかがえるのも興味深く。アフマド少年のことを理解しようとせず自分の価値観を押し付ける大人たち、まるでハエのように完全無視する大人たち、そういう社会だったんだなぁと。

ラストのキレの良さが本当に好きなんですよね。
最初からそうしとけば良かったんじゃん!あの苦労はなんだったの!というオチも素敵。
ノートに挟まれていた押し花だけが少年の苦労を知っているというね。

しかし、キアロスタミ監督作品を観るのにこんなに苦労しないといけないのは本当に不幸な事だと思う。再ソフト化を熱望。
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