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マン・ハントのくりふのレビュー・感想・評価

マン・ハント(1941年製作の映画)
3.5
【ラングの映画ファトワー】

アマプラ見放題にて。先日見た根クラ『緋色の街』から、コッチは根アカ追跡劇かと思いリハビリフリッツしようとしたら、結局コッチも根クラだった。

まあ、その昏〜いオチが最大の訴えなのでしょうが。実際は『緋色の街』よりコワイ…。いま見ても、明らかにプロパガンダ映画だから。

ドイツから亡命してきたユダヤ系監督が、1941年に撮ったアメリカ映画…ってのが本作の要かと。参戦前で中立的な立場だった米国民を英国寄りに導いちゃったとか。ヘイズオフィスが初めて目をつけた戦争映画でもあるそうで、ナルホドわかる気はしますね。

大らか過ぎる英国人ハンターが、ゲーム感覚でドイツに忍び込み、命がけのジョーカー引いちゃって追われる話。主人公は大英帝国を引きずったような性格で、大らかさは傲慢でもある。ゲシュタポ親分との対話に、お国柄や人物像がよく反映されて、大変オモシロイ。

追いつ追われつのハラハラはツッコミ処含みつつ、それなりに引っぱりますが、ロンドンに逃れても、街中をゲシュタポがうろつき、捕まればドイツに引き渡されるってのが一番のコワイ処。当時は宥和政策のおかげで、母国でも安心できなかったんですね…。

はじめ気づかなかったが、ロディ・マクドウォールが主人公を助ける子役で登場!30年近く後に、コーネリアスとして猿変わりすることなど、当時の誰が想像したろうか!

ジョーン・ベネットは華を添えているが、それだけだね…。生贄としての重みも足りない。

でも、本作の牙は1941年の時点で、“寝首を掻くぞヒトラー、洗って待ってろ!”と宣言したコトでしょう。これがプロパガンダでなくて、なんなのか。観客が主人公に思い入れして、中には同じことやらかす輩が出ることまで、もしや期待していたのでは。

ユダヤ系の恨み炸裂!にも思えるが、一方でラング監督、ドイツでは延命のため、ゲッベルスに売込みをしていた可能性もあるらしく…商売人として最大のウケを狙ったものなのか?

原作小説ではヒトラーの名前は暈してあったそうだしね。

比べると、大昔に終わった史実を、安全圏から能天気に改変したタラちゃんの『イングロリアス・バスターズ』なんて、カワイイもんだ!

…ところで、BGMの主旋律がSW“帝国のマーチ”みたいで可笑しくて。コレも聞きどころ!

<2023.11.21記>
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