みおこし

若草物語のみおこしのレビュー・感想・評価

若草物語(1933年製作の映画)
3.5
これにて1933年版、1949年版、1994年版、そして2019年版の全ての『若草物語』の映画化をコンプリート!ジョージ・キューカー監督による最古の1933年版がこちら。あらすじはもう割愛しますね。

なんといっても本作で有名なのがジョー役に大女優キャサリン・ヘップバーンが扮したこと。ヴェネツィア国際映画祭の女優賞を獲得するほど、小説からそのまま出てきたような溌溂として芯の強いジョー役を見事に演じていました。彼女が出ている同時代の他の作品、例えば『フィラデルフィア物語』『赤ちゃん教育』でも男勝りな女の子の役を演じていましたが、正直荒々しすぎてあまり好感が持てず…。本作でのジョー役は元気いっぱいだけど、時折見せる可憐な部分がまた魅力的で、ローリーが恋してしまうのも納得で素晴らしかったです。メグ役のフランシス・ディー、ベス役のジーン・パーカーはイメージ通りだったけど他のバージョンに比べるとちょっぴり地味に感じてしまったけれど、エイミー役のジョーン・ベネットが個人的には原作のイメージに一番近かったです!1994年版のキルスティン・ダンストも良かったけれど、おきゃんな感じが特に良かった。

最新版を観たばかりというのと、何よりあらすじをもう知り尽くしているからというのが大きな理由かもしれませんが、ドラマチックな演出はあまりありませんでした。そもそも1933年と現代の演出技法を比較するのはちょっとナンセンスなのですが…。やはり1994年版と2019年版は撮影技術自体が大幅に進化しているから、4人のドラマを美しい情景描写や回想モンタージュ、音楽などあらゆる方法で盛り上げられるけれど、今回のバージョンはどうしてもその辺りが時代的にも限界があって、流れが一辺倒になってしまっていたのは否めませんでした。ベスの看病のシーンも、周りの反応が過剰すぎてあまり感情移入できなかったし…。また、モノクロということもあり、4人の色鮮やかなドレスを堪能できなかったのも残念…。そう考えるとテクニカラーの1949年版の衣装、すごく可愛かったなあ。

でもさすがは”女性映画”の名手と謳われた名匠ジョージ・キューカー、この時代に女性の社会的自立や、結婚や恋愛に対する価値観について色濃く描いた映画はほとんどなかったはずなので、今の私たちが鑑賞しても十分に共感できる深い脚本と演出に唸るばかりでした…!

全てのバージョンを制覇した今、2019年版も本当に美しい作品だったなと迷う一方で、やっぱり私は1994年版が一番好き!でも本作も1949年版も素晴らしい作品なので、改めて何度映像化しても面白い『若草物語』のすごさに気づかされました。
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