秋日和

お嬢さんの秋日和のレビュー・感想・評価

お嬢さん(1961年製作の映画)
4.0
頭に真っ赤な花の髪飾りをつけた、恋愛経験に乏しく妄想力逞しい大学生の女の子。そんな彼女も家庭に入れば頭から部屋へ、花を飾る場所を変えてみせる。
偶然が招いた若尾文子と川口浩の水色ペアルックを始めとして、80分弱の作品の中に沢山の色が、パチンコの玉みたいに弾けてた。ダグラス・サークや鈴木清順が登場人物の服と背景(乗っている車など)の色を合わせていたように、本作の監督もピンクの服を着た若尾文子にピンクの部屋を訪れさせる。また、劇中に於ける夫役・川口浩のカラーはどうやら緑らしく、布団や電話は鮮やかな緑を放っている(その色分けが終盤で地味に活きてくる愉しさ!)。
もしかしたら結婚というのは、自分の元々持っている色の中に、相手の色が入ってくることなのかもと思った。だから緑色の部屋の中にそっと置かれた赤いスリッパがあんなにも微笑ましいものとして自分の目に映ったんだろう。
三島の原作も好きだけれど、本作も凄く良い。因みに原作は《二人はまるでフルーツ・ジェリィの中のくっついた果物の二片みたいに、寒天に閉じ込められて、皿の上でわなないているかのようだった。》みたいな瑞々しい表現の宝庫です。また読み返したいな。
秋日和

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