垂直落下式サミング

みんな〜やってるか!の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

みんな〜やってるか!(1994年製作の映画)
5.0
金字塔『ソナチネ』のあとにバイク事故を挟んで世にだしたのが、こんなのっていう凄みが、今になっていい味を出してるんじゃないかな。芸術的キタノブルーからの、安くて下品で内輪ノリのクソ映画っていう…。世界的にみても最強で異彩すぎるフィルモグラフィーを遡るだけで、笑みが零れてしまう。
あまり評価の芳しくない本作。しかしながら、お笑い芸人がコメディ映画を撮るというのは、至極真っ当な筋道であるし、北野監督がリスペクトする黒澤明や勝新太郎など、日本映画の偉人たちへの憧れがだだ漏れていているのも、愛すべきところ。
とかくストーリーが行き当たりばったりだし、言ってることもやってることもくだらないし、はなっから整合性を諦めてる。というか、観客を舐めてる。
文化人としてのインテリジェンスとコメディアンのユーモアの釣り合いのとれた両天秤が、世界のキタノな名場面の数々を生んできたが、今回はギャグに傾きすぎて秤量がぶっ壊れた。
ダンカンは、女好きだがセックスできない。いつも浅い考えで行きあたりばったりな行動をしている。でも、思い立ったらすぐ次のカットでは行動に移している無限のマッシブバイタリティーおばけ。この吶喊根性に惚れる!
何かの間違いで小学校だか幼稚園だかのときにみてしまったので、キノコ頭のたけしと助手が「ハエ男だー!」っていうシーンでお腹ちぎれるくらい笑い転げて、親に心配された。
けっこう直接的に下心アリアリの動機が説明される前編のほうからみてたら親に止められるはずだし、そのくらいの幼いときに実写映画を二時間も集中してみれたとは思えないから、たぶん途中からみたんだと思う。
なんかわかんないけどダンカンが頑張っているから、がんばれがんばれって応援してたし、世界まる見え!のコスプレの人が、いつものあの感じで出てきてくれたのが嬉しかったんじゃないかな。
これみたあと影響されちゃって、段ボールと画用紙を黒く塗ってハエ男のコスチューム作って、親戚の家が建ったお祝いの餅投げに着ていったんだよな。ホントに変なガキだった。この頃から、感性が停滞してる。
僕にとっては大切な作品で、キタノ監督のなかでも最重要作だくらいに思ってるけど、いちばん好きな北野武映画を一本あげろって言われてんのに、他の傑作群を差し置いてコレを選ぶ奴の審美眼は信用するべきではないと思います。