とうじ

自由の代償のとうじのレビュー・感想・評価

自由の代償(1975年製作の映画)
5.0
ファスビンダーはやはり悲惨な人物を描いても、その痛みや苦しみを搾取することなく、愛をもって温かく描く。
本作なんて全くいいことが起こらない、呪われた恋愛の救われないドラマなのに、「どうだ酷いだろう」と観客に突きつけるために人物描写を利用する陳腐さに最後まで陥ることなく、キャラクターへの忠実さを押し通す。
それを象徴するように、本作はゲイが主人公なのだが、ゲイ差別の描写は無い。マイノリティを描いた映画がしばしばそうであるように、人物の客体化によって社会問題を薄くなぞるだけで満足していないことには、一種の潔さが感じられる。
だが、ドラマを徹底的に物語っていくうちに、自然と、資本主義とマスキュリニズムへの批判が派生してくるのは見事。
「マイフェアレディ」を見て、かなり嫌悪感を覚えたのだが、それがなぜなのか上手く形容できなかった小6の時の自分に本作を見せたい。
とうじ

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