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ファイト・クラブのYYamadaのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.3
【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
 ○: 観客の緊張感を煽る
 ▲: 超常現象なし

◆作品名:
ファイト・クラブ (1999)
◆サスペンスの要素:
・謎の秘密組織「ファイト・クラブ」の
 成り立ちと展開

〈本作の粗筋〉
・心の中に問題を抱えるエグゼクティブ青年ジャックはタイラーと名乗る男と知り合う。ふとしたことからタイラーとジャックが殴り合いを始めると、そこには多くの見物人が。
・その後、タイラーは酒場の地下でファイト・クラブなる拳闘の秘密集会を仕切ることに。たくさんの男たちがスリルを求めて集まるようになるが、やがてそのクラブは恐るべきテロ集団へと変貌していく…。

〈見処〉
①暴力的な映像の洪水。映画史に残る
 傑作バイオレンス・サスペンス!
・『ファイト・クラブ』は、1999年に製作されたサスペンス映画。
・本作は主演のエドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム=カーターの体当たりの熱演もさることながら、サブリミナル映像を多様した暴力的な映像の洪水が圧倒的な印象を残す。しかしながら、米国公開時には、評論家から(映画内の死亡者は1人にもかかわらず)あまりにも暴力的な内容が非難され、また、米国の興行収入では製作費を回収できず、フォックス重役が解雇される事態となった「必ずしも成功とは言えない作品」であった。
・しかし「フィンチャーによる革新的な映画」「散りばめられた数々の伏線と大どんでん返し」「ブラッド・ピット人気の更なる高まり」「2001年の9・11同時多発テロをグローバリズムにあえぐ市民の立場から予見した内容」とその評価は沸騰。英国の映画雑誌「エンパイア」や世界最大の映画レビューサイト「imdb.com」による歴代最高の映画ランキングでは、ともに10位にランクインするなど、現在では歴史的名作と認知されている。
・なお、2008年の「エンパイア」誌による「最高の映画キャラクター」では、本作でブラット・ピットが演じたタイラー・ダーデンが1位に輝いている。

②キャスティング
・本作を配給する20世紀フォックスは当初、監督の第一候補としてピーター・ジャクソンに白羽の矢が立てたが、『ロード・オブ・ザ・リング』制作準備で忙しい
ジャクソンは辞退。第2候補であった『ユージュアル・サスペクツ』のブライアン・シンガーにもスルーされ、次の候補者のダニー・ボイル、はレオナルド・ディカプリオ主演の『ザ・ビーチ』を選択。
・4番目の監督候補者でやっとデヴィッド・フィンチャーの名前が挙がったが、彼のデビュー作『エイリアン3』を配給し、苦々しい過去があったフォックスは難色を示したが、最終的に『セブン』の演出の力量が買われた。
・また、最終的にエドワード・ノートンが射止めた主演にはマット・デイモンとショーン・ペンが、ブラット・ピットが演じたタイラー役にはラッセル・クロウが最有力候補であったそうだ。
・監督:ピーター・ジャクソン、主演:ショーン・ペン&ラッセル・クロウによる『ファイトクラブ』は見てみたい!?

③結び…本作の見処は?
デヴィッド・フィンチャーが真の実力派監督と認められた作品。
◎: 散りばめられた伏線によって顕にされる数々の違和感が、物語の終盤に見事に回収されるストーリー構成は映画史に残るほど見事な内容。後年のサスペンス映画『ピエロがお前を嘲笑う』(2014)の逆伏線に採用されるほど有名なオチであるが、いま見ても鮮度は失っていない。
○: フィンチャー監督による攻撃的な映像は、CMやミュージックビデオ・クリエイター出身である彼の力量が冴え渡る。
▲: フィンチャーが苦手なラブシーンをCGにより演出しているが、同年公開の『マトリックス』や『スターウォーズ・エピソード1』と比べると随分貧相で、ヘレナ・ボナム=カーターは「不気味の谷」の住民に見える。
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