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パリ、テキサスのkuuのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.9
『パリ、テキサス』
原題Paris,Texas.
製作年1984年。上映時間146分。

ミュラーの切り取る流麗な風景にライ・クーダーの哀愁の旋律が哀しい、ロード・ムービーの作家ベンダースの傑作。
西独(西ドイツ)・仏国(フランス)合作。

テキサス州の町パリを求めて砂漠をさまよう男トラビス。
倒れて口もきかない彼を弟がロサンゼルスの自宅に連れ帰ると、そこには四年前に置き去りにした息子がいた。
今度は息子と一緒に妻を捜しに、ふたたびテキサスへと旅立つトラビスだったが、そこには思いがけないにがい再会が待っていた。。。

劇作家サム・シェパードの著書『モーテル・クロニクルズ』を監督なりの視点で映画化し、ライ・クーダーのギター・サウンドを全編にフィーチャーしてる。
その独特の映像と音楽が小生はヤられました。
余談ながらタイトルは、テキサス州にある場所(パリ)の名前。
砂漠をさすらうひとりの中年男トラヴィス (ハリー・ディーン・スタントン)は砂漠で気を失って保護される。 彼はさすらいの旅に出たまま行方不明になっていた。
連絡を受けた弟のウォルト(ディーン・ストックウェル)がかけつけ、家に連れ戻すけど、そこでトラヴィスは息子のハンター(ハンター・カースン)と再会。
美しい妻のジェーン(ナスターシャ・キンスキー)は家出したまま行方知れず。
トラヴィスは息子とともに彼女を探す旅に出るって感じ。
崩壊していた家族、その静かな再生が米国の荒涼とした原野を舞台に巧く描かれてたかな。
兄と弟、
父と息子、
夫と妻、
ほんでもって、
母と息子。
それぞれのキャラたちが、時間の空白を越えて、静かにそれぞれの関係を見つめる映画やなぁ(沁々)。
Netflixの商業監督が撮ればお涙ちょうだいのメロドラマになっかもしれへんけど、ヴェンダース監督は人物の感情を距離感をもって見つめるようで、そのコミュニケーションは、
トランシーヴァーとか電話、はたまたマジックミラー越しに行われてて、
直接、人物同士が顔を合わせることは少ない。
例えば、トラヴィスは奥さんへの屈折した愛をマジックミラー越しにしか告白できなかったり。
生の感情をぶつけあうんじゃなく、物や機械を間にはさんだコミュニケーションちゅう設定が、いかにも現代的かな。
『ダーク・ワズ ・ザ・ナイト』ちゅう曲が映画ラストシーンで流れるけと良かったし、
冒頭に流れるテーマ曲『パリ、テキサス』も強烈やった。
聞く人の心をガッツリ鷲掴みにするような強烈なサウンドでした。
ギターのシンプルなボトルネック(奏法)・ギターの音だけで、人物がかかえる孤独な心の闇を、ホンマ巧いこと照らし出してるかのようやし、息苦しく、内向的、そんな世界に音楽が人間的な温もりと悲しみをあたえるかのようでした。

因みに、ボトルネック(スライド)奏法はギターの奏法のひとつで、スライドバーと呼ぶ棒を指に、装着または持ち、弦がフレットや指板から浮いた状態のままバーを任意の位置で弦に接触させ、ピッキングして発音する奏法です。
バーボンの酒瓶の首の部分を切り取って作ったことから『ボトルネック』奏法と呼ばれるようになり、酒瓶以外にも牛のあばら骨を削ったり水道の鉛管を切り取ったり小さな薬瓶を使ったりといろいろな工夫がされてきました。中にはジャックナイフの背の部分を使ったり、zippoのライター(zippo愛好者の小生はこれを好んでます)を使うプレイヤーもいます。
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