Mikiyoshi1986

ガープの世界のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ガープの世界(1982年製作の映画)
3.8
故ロビン・ウィリアムズの出世作であり、ジョン・アーヴィングのベストセラー小説をジョージ・ロイ・ヒルが映画化した監督晩年の代表作。

本作は看護婦ジェニーの私生児として育てられた主人公ガープの生涯が綴られていますが、
ここには未婚シングルマザーという強い女性の生き方から始まり、ウーマンリブ、フェミニズム(ラディカルとリベラルの両方)、同性愛者、夫婦問題、不貞・姦通、主張の在り方、抗議や集会の暴走性、暗殺、銃社会など当時のアメリカが抱える先進的な問題を数多く取り入れており、
まさに70年代前後のアメリカを象徴した作品とも云えます。
(そう思うと、本作では取り上げられてないテーマが「フォレストガンプ」で丸々扱われているのもなかなか興味深い)

とりわけ母と息子という男女の二極間で、それぞれの性の観点から幸福の手繰り寄せ方を見せていく手法も面白い。(まるで処女懐胎の聖母マリアと数奇な運命を辿る息子キリストのよう)
人生の喜怒哀楽、絶頂とドン底、酸いも甘いも、喜劇性と悲劇性を一緒くたに織り込んだ本ストーリーはまさしく人生の醍醐味そのものを描きます。

そしてこの舞台であるアメリカは、理想社会の実現を求める指導者が凶弾によって暗殺・封殺されてゆく歴史を幾度となく繰り返してきました。
JFケネディ、マルコムX、キング牧師、そして本作公開の前年・前々年にはジョン・レノン、レーガン大統領も。
銃犯罪とアメリカ社会の関係性を痛烈に印象付けると共に、ビートルズの「When I'm sixty-four」はエンディングでより一層心に沁みるのです…。ジョン…泣

ちなみにガープの妻ヘレン役を演じたメアリー・ベス・ハートはガープの母親役グレン・クローズより一歳年上なのもなかなか面白いポイント。

本作は「アメリカン・ビューティー」のように家族周辺を通して"現代アメリカの肖像"を見事に捉えた作品ですが、
映画として唯一解せないのは夫婦問題(肉欲の不義)の皺寄せが結果子供に降りかかるという余りにもリアルで酷すぎるシナリオ…。
まぁそれがテーマの一環でもあるので良しとしても、やっぱり事が事なだけにその後の妻の態度に私は嫌悪と怒りしか抱けないし、まったく許せる気がしません。
それをも許せる寛容な心が育めた時にまた観賞したい作品です。
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