はなればなれのマチルダ

街のあかりのはなればなれのマチルダのレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
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ずっと不思議だった。アキの作品は殆ど誰も喋らないのに、どのショットもこれでもかというほど多くのメッセージを受け取る。それは役者の演技と作品背景によるものだとばかり思っていたが、そのほぼ全てはショット割とフレーミングによって語られるのだ。
そもそも、ショット割を勉強したくてアキを見返し始めたのだが、思いの外1ショットが短いテイクで驚いた。またフレーミングに関しても、ロングか少なくともミディアムロングが9割を占めていると言ったら流石に過言ではあるがそれぐらい被写界深度の深い印象であったが、その印象以上に多くのクロースアップが導入されていてまた驚かされた。よくぞこれほどまで自然に、寄って・切っての編集をしたな、と感銘を受けずにはいられない。
言葉で語らなくても、この白眉な才で多くのメッセージを送ってくれていたから、アキ・カウリスマキの映画はこれほどまで人間味があり、人が作品に寄り添うのだと分かった。

そして、ラストの男の子とホットドッグの女性が男の元へ向かって歩くシーン、「赤い砂漠」過ぎて、強烈な強さと美しさを何の予兆も無く唐突にぶち込まれて鳥肌が立ちました。