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恋はデジャ・ブのYYamadaのレビュー・感想・評価

恋はデジャ・ブ(1993年製作の映画)
3.7
【タイム・パラドックス佳作選】

◆パラドックス発生の方法
〈タイム・ループ〉
 →朝起きると、また同じ日を迎える

〈見処〉
①「自己成長」の物語
・『恋はデジャ・ブ』は、1993年に製作されたコメディ映画。
・本作の舞台はアメリカ、ペンシルバニア州。主人公のフィル(ビル・マーレイ)はローカル局の気象予報士。毎年2月2日の「聖燭節」の取材のため、美人プロデューサーのリタと田舎町パンクスタウニーを訪れる。
・フィルは嫌々仕事を終え、早めに帰ろうとするも吹雪で道路が閉鎖。やむなくパンクスタウニーで泊まるが、翌朝午前6時に目覚めると昨日と同じラジオ、街中で会う人もみな同じセリフ、同じ反応。
・毎日午前6時に目覚めると、2月2日が繰り返される超常現象はフィルのみに繰り返され、他の人はみな初めての2月2日を体験している。フィルはこの「特権」を利用していく毎に、彼の傲慢な性格に変化が見られてくる…。
・原題「Groundhog Day」は、物語の舞台となるアメリカ各地で行われる伝統行事の日を差す。
・ハロルド・ライミスは本作の脚本化にあたり、近代ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェによる「永劫回帰思想」~物事の経験が一回限り繰り返されるという世界観ではなく、超人的な意思があれば、ある瞬間と全く同じことが、永劫的に繰り返され、人間的な高みに到達する~を採り入れたそうだ。
・公開時にはロマンティック・コメディとしてマーケティングされていた作品であるが、現在では、他者の人生を支え、自分の内面も変えていく人間的成長の物語を哲学的な面が語られることが多くなった稀有な作品であり、タイムループ作品としても名作の誉れが高く、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。

②ビル・マーレイとハロルド・ライミス
・大ヒットSFコメディ『ゴーストバスターズ』(1984)の主演兼脚本を務めたハロルド・ライミスが本作の監督と脚本を担当。
・本作撮影の終盤、タイムループから抜け出すラストシーン。主演の「盟友」ビル・マーレイは「昨夜と同じ服なのかパジャマなのか何も着ないのか?服装が決まるまで撮影を断る。」とライミスに強く迫り、ライミスはその意見を持っていなかったことから、撮影スタッフADの意見が採用。
・マーレイによるライミスへの失望を経緯に、『ゴーストバスターズ』以来、良い関係にあった2人は仲違いし、以降共演することなく、ライミスは2014年に死去。2021年公開予定『ゴーストバスターズ/アフターライフ』では、旧作キャストの全員集合とならなかったのが残念だ。

③結び…本作の見処は?
○: 本作はラブコメと思いきや、人間賛歌の物語。「このビールが半分しかないと思うか、まだ半分あると考えるか」など、深いセリフが刺さる。
○: 『ミッション:8ミニッツ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ハッピー・デス・デイ』…全ての「ループもの」映画の原点。
▲: もう少し「なぜタイムループするか?」の描写に触れて欲しかった。
▲: トップ・コメディアン俳優、ビル・マーレイを配役もコメディ場面は少なく、あまり笑えない。
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