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話の話のbackpackerのレビュー・感想・評価

話の話(1979年製作の映画)
3.0
ユーリ・ノルシュテイン監督第6作、最高傑作と名高い自伝的作品。

第二次世界大戦後のモスクワを舞台としている本作は、一言でいえば「わけがわからない」作品です。
というのも、オオカミくんと暗い廃屋、あせたセピア調の家族の風景、冬の公園の少年と両親、戦争で消えていく家族……と、物語は一見すると不可解で連続性がわかりにくく、非情に謎めいており、解釈の仕方によっていかようにも理解できるような内容のため、理解することが前提の作品ではない、ということだと考えられます。
フェリーニの『8 1/2』のような、監督が好きなことやった系作品の印象です。
個人的には、本作はノルシュテイン監督の人生の記憶が反映芯にあると踏まえた上で、過去の追体験を可能とする、タイムマシーン的作品なのかなと感じております。

作中に登場するオオカミの子どもは、ロシア子守唄に登場するキャラクターらしく、本作の狂言回しの役割とされているようです。
作品を進行させる存在であるのは間違いありませんが、個人的には、記憶の案内人という方がしっくりきます。
廃屋と化したアパートには、戦前は多くの家族が暮らしていたのに、戦争で男が出兵し明かりが消えていく様子。
幼少のノルシュテインと思しき少年の寂しい心情。
理想郷としてのセピアの世界。
ノルシュテインの記憶であり、ロシア(ソ連)の記憶であり、戦争の記憶である。
それらの記憶が思い出として刻まれるアパートを探検するオオカミくんは、我々の案内人の役を任され、過ぎ去った過去を悠久の時の彼方より引っ張り出し見せているのかな、という印象です。

あーだこーだと思いを馳せる事ができますが、素朴ながら難解、複雑ながら簡潔、そんな"よくわからない"作品でした。

なお、本作以降のノルシュテイン監督は、とんでもない時間をかけて現在鋭意制作中の作品『外套』の他、砂糖のCMや子ども向けTV番組のOP等、小さな作品をいくつか発表しています。

【受賞歴】
1980年 第13回全ソ連映画祭最優秀賞
    リラ国際映画祭最優秀賞・国際批評家連盟賞・ノルド賞
    第5回ザグレブ国際映画祭最優秀賞受賞
    オタワ国際映画祭最優秀賞
    カトリック批評家賞
    オタワ国際映画祭最優秀賞
    オーバーハウゼン国際映画祭国際映画クラブ連盟賞
    第二回モスクワ国際青少年映画祭最優秀アニメーション賞・観客審査員賞
1984年 映画芸術アカデミーとハリウッドASIFAが共催した国際アンケートにて、「歴史上、世界最高のアニメーション映画」として認定。
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