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宇宙戦争のYYamadaのレビュー・感想・評価

宇宙戦争(2005年製作の映画)
3.5
【監督スティーブン・スピルバーグ】
 第23回監督作品
◆ジャンル:  
 パニック・ムービー、
 ホラー・スペクタクル

〈見処〉
①スピルバーグ初の「敵性宇宙人」
・『宇宙戦争』(原題: War of the Worlds)は「SFの父」H・G・ウェルズが1898年に発表された小説を原作とし、1938年のラジオドラマ版や、1953年の映画版から多くのオマージュを受けている、2005年公開のパニック映画。
・舞台は、米国ニュージャージー州ベイヨン。ブルーワーカーのレイ・フェリエ(トム・クルーズ)は離婚した妻がボストンに里帰りの間、彼の2人の子供、ロビーとレイチェルを預かったのだが、彼らと良好な関係を築けずにいた。
・ある日、レイは街の同じ場所に不気味な暗雲から稲妻が数十回も落ちる光景を目にする。同時に町中が停電となり、家電や自動車もほとんど機能しなくなった。
・レイは野次馬たちと落雷した場所を見にいくと、地響きと共に地中から巨大な三脚歩行マシン「トライポッド」が出現。レーザーで次々に人々を粉殺し、街を破壊してゆく。
・なんとか逃げ延びたレイは、盗んだ車でレイチェルとロビーと共にボストンを目指すが…
・本作はスティーブン・スピルバーグの第23回監督作品にして『未知との遭遇』『E.T.』などの人類に友好的な異星人から一転して「敵性宇宙人」の侵略を描いている。掲示板に貼られた無数の人探しの張り紙など、これらの描写は、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件のテロを連想させる演出を行っている。

②冴えるスピルバーグ一級の演出
・「敵性宇宙人」は初めてのスピルバーグであるが、パニック描写は『激突』『ジョーズ』『ジュラシック・パーク』と彼の得意分野にある。
・本作では特に、冒頭で「トライポッド」が全容を現す前の「見えない敵」に対する恐怖や、逃げ惑う群衆が乗用車やフェリーに密集する描写は、パニック第一人者としての力量が光る。
・また、本作中盤で盗難車でハイウェイを逃走するシーンは、疑似「長尺ワンショット」撮影。『1917 命をかけた伝令』や『タイラー・レイク -命の奪還-』の15年前に、このような描写をしていたと脱帽である。

③結び…本作の見処は?
スピルバーグの演出は冴え渡るが、古典映画の原作に縛られ、窮屈な作品となってしまった。
◎: 冒頭1時間における群衆のパニック描写は、スピルバーグ他作を含む、同ジャンル作品の中でもトップクラスの演出。
▲: 原作由来によるものだろうが、終盤の地下室のシーンは、作品のテンポとスケールダウンが甚だしい。
▲: これも原作由来の脚本のせいだろうが、宇宙人は、人類誕生前にトライポットを仕込んでおきながら、結局何をしたかったのか作中描写ではわからず。
▲: ほぼ同じストーリーの『インディペンデンス・デイ』に比べ、ドラマティックさに欠ける。
▲: 絶賛された天才子役ダコタ・ファニングの演技であるが、自分にとってはキーキー・キャーキャーと少数目障りな存在だった。
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