三樹夫

白と黒の三樹夫のレビュー・感想・評価

白と黒(1963年製作の映画)
3.9
監督堀川弘通、脚本はしし、主演小林桂樹の『黒い画集 あるサラリーマンの証言』の面々が再集結。『黒い画集 あるサラリーマンの証言』はマツキヨらしい不倫ナイトメアかつ、はしし脚本らしい安泰の保身か破滅の良心かを問うてくるものだったが、今作も『黒い画集 あるサラリーマンの証言』の系譜というか、意識しているのはマツキヨが特別出演していることからも分かるし、ストーリーも結構似ている。今作でも安泰の保身か破滅の良心かを問われるが、人間性を問う二択を迫られるのが仲代達矢と小林桂樹というので2人に増えている。またミステリー要素が増しており、ミステリーをしたかったのが読み取れる。検痔小林桂樹は検事かつ探偵役でもあり、小林桂樹の推理シーンもある。

弁護士仲代達矢が不倫相手の弁護士会長夫人の首を絞めて逃走。その後に空き巣に入った男が殺人の容疑者として逮捕される。検事小林桂樹が事件を担当するが、殺された夫人の夫は死刑廃止論者の弁護士で、仲代達矢を助手として容疑者の弁護を担当するという話。
ここでまず仲代が安泰の保身か破滅の良心かを迫られる。このまま黙っていれば自身の身は安泰だが、良心の呵責に苛まれる。さらにその上、小林桂樹がこれ殺人の犯人は別にいるんじゃねと思い始めるが、殺人犯は空き巣男というのでもう裁判が始まっているため、これで犯人は別にいましたとなると検察庁のメンツと自身の進退問題が降りかかってくるという、小林桂樹もまた安泰の保身か破滅の良心かを迫られる。しかしこの人間性を問う二択の迫り具合は『黒い画集 あるサラリーマンの証言』に比べると緩いように思われる。『黒い画集 あるサラリーマンの証言』の主人公の方がもっと追いつめられていたし、自分たちのメンツのために人を犠牲にする現実の検察を見ているとより緩いように感じられる。これにはおそらくミステリーにも軸足があるというのもあると思う。
ミステリーらしく二転三転し、話が進むにつれどんどんドライブしていくし、ミステリー的サプライズに帯同して希望のように持ち上がった人間には良心があるということが踏みにじられるはしし脚本らしい展開もある。最後なんかは暗黒みたいな終わり方してた。この映画に限らずだが、ミステリーとしての難点は推理シーンになると画が死ぬということにある。画は死ぬけどはしし脚本らしい人間性についてのもはや演説にはなっていたが。
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