A8

お葬式のA8のレビュー・感想・評価

お葬式(1984年製作の映画)
3.5
昨年の午前十時の映画祭の時は、
邦画に対してあまり興味が湧かなかったのを懐かしく思う。
あれから約1年、黒澤明監督「生きる」をきっかけにいまでは、よく観るようになった。

そしてこの「お葬式」という作品は中でも
観たいと思っていた作品だったので
DVDを借りてきての鑑賞。


なんの前触れもなく訪れる突然の死。
当の本人は、、もちろんそれはわからないが
残され遺族はそりゃ悲しい。
でもあの宮本信子の顔を見たら悲しいというより呆気に取られている感じがするが、、

だが、呆気に取られるのはココマデ。
台風がやってきたかのように
故人への弔いと関わってきた人へのお別れをする儀式を行わないといけないのだ
“お葬式”それはまさに台風である。



女優俳優同士の夫婦はCMを撮影していた
その現場へ一本の電報が入る
“父さん亡くなったって”
そう呆気に取られた表情で旦那に呟く
華やかな芸能界なんて関係ない
それが誰もが平等に出くわす“死”
そしてそれに付随するように遺族は“お葬式”が待っている。
その華やかさなどが一変、慌ただしい普遍的な日常がひっくり返すような“お葬式”、、それはまるで関係なしにやってくる“平等”であるかのよう。生きるものの“運命”の突然さを
より浮き彫りにするかのように描いた場面、設定であると思った。

ザーザーと雨が降る中
2台の車がカーチェイスを行う
でもこれはただのカーチェイスではない🚗
カツサンドを隣の車に渡すために
必死で近づこうとしているのだ
停まる時間すら惜しい、激しいカーチェイス降り止まない大雨、、
これから訪れる台風の序章を感じさせる演出だった。

全体的に女優だろうが俳優だろうが、有名人だろうがなんだろうが、そこは忘れてしまう
ほど誰もが経験する“お葬式”というものの普遍さというだろうか、、
そういったものと、
台風のように悲しむ暇もなく慌ただしいそのリアルな情景。


伝えたいモノを浮き彫りにするためのうまい設定や仕掛け
コメディ要素を織り交ぜながら
それぞれの登場人物のキャラクターをうまく作品に落とし込められていた。


愛人問題やなにやら出てくるのだが、
この人の死を機にお葬式を機に人は強くなったのだろうか、、
つんと胸を張って受け止めようと大人になる妻の姿が印象的だった。
あの丸太で左右に振られているシーンそれを感じた。
葬式前に浮気するほど阿呆だが、
(やっぱり渋くてカッコいい山崎努)
そこを包み込むように受け入れるように
最後のシーン、肩を寄せ合った奥さんのあの姿は印象的だった。
これが言葉で表さないが誰もが感じることができる演出なのだろう。

台風のなかにいる当の遺族は悲しむどころではない(言い方は変だが)
老人会で仲良くなったお爺さんやお婆さんが訪れるワンワンなくシーンがあるのだが、
ふと、自分たちが悲しんでいる暇がないほど慌ただしかった(台風の中にいる)ことに気付かされるような遺族の姿が印象的だった。

こういうふうに対比を生んで“伝えたいこと”を浮き彫りにさせるその表現法がすごいと思った。

エンタメ×ドラマ性
浅く見ても面白い
深く見たら発見がある。

リアルなテーマを題にしているからこそ
勉強になることもある映画だった。
A8

A8