「『電話ではなくて手紙をください』そう言ってアイリスは微笑んだ」
「文盲(もんもう)」という言葉を知ったのは中学生の時、対談番組で、年を召された有名な女優の「旅芸人の家に生まれたので、学校も行かせてもらえず、親もそんなとこ行くより芝居を覚えろという人だったので、大人になるまで読み書きを習ったことがなく文盲でした・・・・ひらがなは読めますが難しい漢字は今も・・・」という衝撃的な会話を耳にしたときです。
小学生の低学年の時、世界的に有名なサーカスの団員の兄妹が転校してきました。「明日から3ヶ月通います」と紹介されて一度も通わないうちに転校していきました。私は友達になる気満々だったのに、学校には別れの挨拶にすら来ませんでした。大きなサーカス団になると、サーカス内に勉強を教える学校みたいなものがあって、色々なことを教えてくれると聞いたことがあるのですが、担任の先生もその子達の将来をすごく心配していました(彼らが文盲という訳ではありません)。
世の中には「あたりまえ」が「あたりまえ」ではない世界にいる人がいて、その家に生まれたばかりに、普通の教育を受けることもなく、親が決めた通りの生き方しかできない人がいることは、あまりにも衝撃的でした。
この映画を観ると、いつもこの二つの話を思い出します。
この映画は郵便局の掲示板に
「『電話ではなくて手紙をください』そう言ってアイリスは微笑んだ」と、書かれたポスターが掲示されていて、気になっていたのですが映画館で観ることはありませんでした。
正直、すでにアカデミー賞主演男優賞を受賞して、アクション系の大役をこなすデニーロが「こんなテレビドラマのような映画の冴えない役をするの?」と思ってしまう小粒な映画、お相手はすでに2個オスカーを所有するジェーン・フォンダです。「だけど何故?デビュー作なの?」って思うほど小粒!
クスリのパッケージの文字も読めない、名前も書けないコックス(デニーロ)が、その事が原因で職場の食堂をクビになり、収入が無くなり住むところがなくなり、父を施設に預けることになり、施設からの電報も読めず、施設を訪ねると父は既に・・・。
雨のなかで、アイリス(ジェーン・フォンダ)に「もじをおしえて」とお願いするシーンはきっと泣いてしまいます。
歳をとってからの学習には限界があり、二人はケンカ別れするのですが・・・。
少し不幸だけど普通の人たちの普通の生活が二人のオスカー俳優で描かれる映画です。
小粒な映画は小粒なハッピーエンドが待ってます。
やっぱり映画館で観なくてよかった。だって映画館出るとき泣いてちゃカッコわるいじゃない。って思わせる、何回観ても涙の素敵なエンディングの映画です。