櫻イミト

十月の櫻イミトのレビュー・感想・評価

十月(1928年製作の映画)
3.5
エイゼンシュタインン監督の「戦艦ポチョムキン」(1925)に次ぐ3作目。史上初の社会主義国家を成立させた1917年ロシア革命の10周年記念映画。レーニン指導下の革命の様子が壮大なモンタージュ映像で描かれる。

現在広く公開されているものは50周年記念として劇伴とSEを加えた「十月(サウンド版)」(1968)。ソ連の大作曲家ドミートリイ・ショスタコーヴィチがレーニンを偲んだ交響曲第12番「1917年」(1961)を使用。

「戦艦ポチョムキン」の“オデッサの階段”シーンのテンションがずっと続く。革命の主役たるレーニンも登場するが(演ずるのは似た風貌の素人役者)出るのは前半の一部だけで、映画の大半は群衆のぶつかり合い。革命を讃えるプロモーション映画であり、煽り語調の字幕とイメージ映像の切り返しは格闘技イベントの煽りVTRの元祖のようなものだろう。面白い映像が多く当時の映画人たちはたくさんの刺激をうけたのでがないか。有名な橋の開閉シーンは、女性の髪のアップと巨大な橋の切り返しが尋常でない迫力を醸し出している。

全面字幕とイメージ映像の切り返しを観ているうちに、これ極太明朝にしたらエヴァンゲリオンみたいだなと思った。バラバラの銅像の手足が逆回転でくっついていくところはSEの感じも合体ロボットアニメのようだったし、コマの切り方も画角もすごく戦闘アニメっぽい。東映動画のクリエイターの皆さんは絶対に本作から影響を受けていると思う。

※同年は映像が面白い映画が多く作られている
「アンダルシアの犬」(フランス)
「裁かるゝジャンヌ」(フランス)
「貝殻と僧侶」(フランス)
「風」(アメリカ)
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