horahuki

レクイエム ミカエラの肖像のhorahukiのレビュー・感想・評価

4.0
悪魔憑きか?精神病か?それとも…

1970年代に実際に行われた悪魔祓い事件を描くホラードラマ。同じ事件を題材とした『エミリーローズ』が裁判から遡ることで事件を明らかにしていったのに対して、こちらは主人公の精神が変調を来す様子と悪魔祓いが行われるまでを息が詰まりそうな苦しさで描いた“エミリーローズビギンズ”的な作品。

wiki見てみたら「精神障害の誤認、怠慢、虐待、そして宗教的ヒステリーと位置付けられている」と書かれていて、一応精神障害だったと結論づけられてるようですね。色んな医療機関を受診して薬も処方されても全く改善されなかった(むしろ悪化した)みたい。そう考えると「虐待、宗教的ヒステリー」は宗教サイドだろうけど、「精神障害の誤認、怠慢」っていうのは医療側の落ち度のことなのかな?

どちらにしても医療不信からエクソシズムに…っていう『エクソシスト』の流れが現実に先行してしまってる(『エクソシスト』が1973年、本作の悪魔祓いが1975年)のが何というか、真に問題なのは何なのかってのが表れてるというか、とにかく悲しくなってくる…😰

そんな感じで宗教と科学(医療)というセンシティブなテーマかつ事実ベースなために、医療側・宗教側ともに何かしらの落ち度をつつくような深掘りはせず、また主人公ミヒャエラの内面の奥深くに入り込み分析するような烏滸がましいこともせずに、淡々とアイレベルアングル多めで客観的な観察を続けている。

ショットの中で感情が芽生えてくる一歩手前でカットを割るのを繰り返すことでドラマチックさが生まれるのを完全に排し、ドライな雰囲気のまま逃げ場のない悲惨さを延々とフィルムに焼き付ける。手持ちカメラ多めなため、当事者密着系のドキュメンタリーに近い雰囲気も。そんでそれ故に狭窄的な視界も頻繁に登場し、広がりを見せないカット割と合わせて、とにかく息苦しさを全開に押し出してる。

ボーイフレンドが途中で出来て、その際には表情にドラマチックさが加わるんだけど、カメラはあくまでもドライ。キスシーンすら画面の中央には来ず片側に寄り、絡めとろうとするかのような複雑な枝が主人公の背後から覆い被さるような構図という具合に、束の間のハッピーさえ否定されちゃう…😭更にはこの“枝”がラストシーンに覆い被さる影として反復されて効いてくるのも構成が綺麗!すんごい辛いけど…😢

「自分自身を知ることである」と教授が口にする学問を専攻し、それを“夢”として一生懸命頑張る主人公。その足枷として宗教と医療が位置付けられるような描かれ方をしていて、ここに本作がドキュメンタリーでなく創作として製作された意図があるような気がした。実話で背後には関係者たちの尊厳があるから主観的な解釈は書けないけれど、『エクソシスト』と同様に“内的”と“外的”が主題なのだろうと思った。もしかしたら『セイントモード』は本作をある程度は参考にしているんじゃないかな。良い作品👍
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