とうじ

ピショットのとうじのレビュー・感想・評価

ピショット(1981年製作の映画)
5.0
大傑作。
80年代は映画における不遇の時代として有名だが、そんなことはない。
本作が作られているということだけで、80年代は確実に、映画にとって最も素晴らしい時代の一つとしてみなすことができる。
最高すぎる。誰でも絶対に見なければならない映画。
トイレで主人公のピショットが体調の悪そうな売春婦と出会うシーンが、本当に凄い。ものすごく陰惨で、辛く、今まで映画でみたことのある場面の中でトップレベルで痛々しいものではあるのだが、単なる猛毒として観客に提示されるのではなく、微かな温かさと、ユーモアも奥底に感じ取れるような場面となっている。
そして、それは本作全編についても同じことが言える。社会問題を扱う際に、被害者の悲劇的な境遇からドラマ性を搾り取ろうとする映画が大半を占める中、本作は、誠実に、終わりかけの社会の底辺で生きるというのは本当はどういうことなのか、ということを理解しようとする。
だからこそ、本作には綺麗な脚本術や、「これを作っているのは富裕層である」というメタ的な言い逃れは見当たらない。事実として、腹を殴られるような衝撃を含む映画なのは間違い無いのだが、そのような見せ物的な価値観に耽溺していない。
あくまで人生とは、悲劇や喜劇、悪趣味やメッセージ性などの枠など関係なく進んでいくのであり、その通りに進んでいく本作は、本当に見事で、素晴らしい傑作である。
とうじ

とうじ