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ダンサー・イン・ザ・ダークのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

3.9
ラース・フォン・トリアー監督による「奇跡の海」「イディオッツ」に次ぐ「黄金の心」3部作の3作目。
アイルランドの歌姫ビョークが主演と音楽を担当したミュージカル・ドラマ。
原題:Dancer in the Dark  ( 2000、2時間20分)

1964年、ワシントン州の田舎町。
チェコスロバキアからの移民でシングルマザーのセルマ(ビョーク)は、警官のビル(デヴィッド・モース)夫婦から敷地内のトレーラーハウスを借りて生活している。
セルマは先天性の病気で徐々に視力が失われつつあり、今年中には失明すると医者から宣告されている。
息子ジーン(ヴラディカ・コスティック)も彼女からの遺伝により13歳までに手術をしなければ失明してしまうため、セルマは、昼はプレス工場で働き、夜は内職をして手術費用を貯めてきた。
セルマの楽しみはミュージカルの舞台で歌い、踊ることであったが、それも視力の悪化で難しくなり、ヒロイン役を降りざるを得なくなる。
完全に失明する前に何としてでも必要なお金を貯めようと、母親のような友だちキャシー/クヴァルダ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の反対を押し切って夜勤も始めるが、ミスから機械を壊して解雇される。
まだ不足ではあるが今あるお金で手術をお願いするしか手段がなくなったその日、彼女は貯めていたお金を心を許した人物に盗まれてしまう…。

~脇役~
・ビルの妻リンダ( カーラ・シーモア)
・セルマに好意を寄せる心優しいジェフ(ピーター・ストーメア)
・チェコスロバキアの有名なダンサー、オルドリッチ ・ノヴィ( ジョエル・グレイ)
・工場長ノーマン (ジャン=マルク・バール)
・劇団長サミュエル(ヴィンセント・パターソン)
・女性刑務官ブレンダ ( シオバン・ファロン)
・地方検事 (ジェリコ・イヴァネク)
・ポーコルニー医師(ウド・キア)

「なぜ、ジーンを生んだんだ。遺伝すると知りながら。
赤ん坊を抱きたかったの。この腕に、この腕に」

"沈黙の約束"

(最後から2番目の歌)
"これは最後の歌じゃない。分かるでしょ。私たちがそうさせない限り、最後の歌にはならないの〟
"They say it's the last song
They don't know us , you see
It's only the last song
If we let it be"

ヒロインは、なぜ真実を言わないのか、なぜ○○に会わないのかと不思議に思う。
でも、それは、セルマ(母性)にとって目の病気が遺伝することが分かりながら子どもを産んだこと自体がある種のエゴであり、その道を選んだ以上、子どもの目を失明させないことが絶対的に優先されるからだ。
過酷な運命にさらされる現実とは裏腹に、夢想するミュージカルの中で自由奔放に歌い踊るヒロインの純粋な顔は喜びに溢れている。
そして、音楽や映画は今後も、世界中のセルマのような人たちに、夢や生きる希望を与え続けていく。
なお、この作品はトリアー監督の他の作品と違い、裸や性描写がない。それもよい。

~サントラ①ー⑦~
①オーヴァーチャー - "Overture" (Björk)
②クヴァルダ - "Cvalda" (Björk, Mark Bell, Sjón , Lars von Trier)
カトリーヌ・ドヌーヴとのデュエット
③アイヴ・シーン・イット・オール
"I've Seen It All"
トム・ヨークとのデュエット。
④スキャターハート - "Scatterheart" 
⑤イン・ザ・ミュージカルズ - "In the Musicals" (Björk, M. Bell, Sjón , L. Trier)
⑦107ステップス - "107 Steps"
シオバン・ファロンとのデュエット
(⑧My Favorite Things)
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