むっしゅたいやき

アンナ・マグダレーナ・バッハの日記のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

3.8
バッハの名曲群に酔い痴れるひと時。
ジャン=マリー・ストローブ&ダニエル・ユイレ。
タイトルから想像出来る通り、音楽の父、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの後妻であるアンナ・マクダレーナ・バッハによるナレーション及び、バロック時代の衣装、古楽器で演奏されるパートから成る作品である。

本作で興味深いのは、語り部となるアンナ・マクダレーナの良人であり、劇の中心人物たるバッハに就いては、ほぼ無言劇である点に在る。
劇よりも演奏パートの比重が重く、更に劇自体の進行も極めて散文的で、推測を含まず単に事蹟のみをアンナ・マクダレーナ目線のナレーションで語る形式である為、我々はその折々のバッハの心理を知る術が無い。
虚飾やアレンジの一切を廃してバロック期の奏法を用い、また同時代の建築物内で行われた演奏と云い、事実のみを積み上げて作品を構築している様は、まるで一つの計算され尽くした建築物を見ている様な気分にすらなる。

ほぼ室内一発録りの長回しであるが、カメラは寄りと引きを駆使し、また唐突に汀の画を挿し込む等、圧迫感と臨場感、そしてそれからの解放感と緩急のついた構成となっている。
惜しむらくは私自身にバッハの苦悩や人生、バロック音楽その物を語れる程の素養が無い為、本作を真底から理解し切れていない。
音楽史に詳しい方のレビューが待たれる作品である。
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