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Talking Head トーキング・ヘッドのHKのレビュー・感想・評価

3.9
押井守監督による映画史映画。キャストは千葉繁、石井ともこ、立木文彦などなど。

超大作アニメ映画「Talking Head」の製作中、企画を出した監督である丸輪零が失踪するという事件が発生した。結果的に監督代理を担うことになった私であるが、他のスタッフたちは私を敵視し、それぞれが構成する要素こそが一番映画で重要だと言って収拾がつかない。そしてなんとスタッフが次々と殺されていく殺人事件が発生する。無事に映画を作ることができるのか。

押井守さんの実写映画の中では今のところ一番好きな作品ですね。彼が映画に対してどのように捉えているのかとか、そういう映画に対する彼の見方をこの映画でしっかりと確認することができるのでいいのかと思いますね。

特に、彼の最大の特徴である衒学的な押井節で行われる。あまりにも難しい語彙を大量に用いた長ったらしい説明が、却ってそういう小難しいことが好きな人間たちの興味を抉って画面に集中させる。流石一人が100回見る映画を作る男ですよ。個人的にはもっと見たいと思いましたね。

押井さんなりの映画に対して捉えている映画論だとか哲学みたいなものは、この映画でしっかりと押井節で語ってくれるため、それだけを拝むために映画を観るということもありなんじゃないでしょうか。

所々出される小ネタやギャグやコメディ要素も結構面白かったです。立木さんがゾンビとして蘇るという設定も結構笑えました。たまにああいうはめ外したギャグを実写だとぶち込んでくれていいですね。千葉繁が主演の映画だとその傾向に近いので、やはり千葉繁の影響が強いのですかね。

いずれにせよ、今思っても大御所ともいえる声優さんが勢ぞろい、田中真弓さん、山寺宏一さん、くじらさん、松山鷹志さんなどなどアニメオタクとしてみても豪華声優陣が映画に出ていてそこがとても良かったですね。

そんな中でも、目立っていたというか、見事に主役を演じていたのが千葉繁さんなのだと思いますね。本当に良い味を出しています。

この映画のラストも、押井さんらしく最後は少女のアップで終わる。今回はちょっと怖かったですね。ホラー演出っぽくて。

映画を作るのにルールはない。作りながらルールができるというのはやはり押井さんらしいですね。どのジャンルにも適さないメタ構造も見事に利用した素晴らしい映画だと思いました。もう一回見てみたいですね。
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