レッドアップル

オルエットの方へのレッドアップルのネタバレレビュー・内容・結末

オルエットの方へ(1970年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

『メーヌオセアン』とはいろいろと対照的。
『メーヌ』が、人と人の偶然の出会いが無限に仲間を増やしてくれそうな喜びだったのに対して、旅先で顔の見知った上司に出会うという地獄が待っている。しかもその出会いはあらかじめ仕組まれたものだった。
バカンスの終わりという悲劇に向かってカウントダウンをするように章立てされていたり、乱雑に見えて色彩も構図も編集もしっかり設計されていたり、かなり整然としていた印象がある(『メーヌ』はもっと各場面が意味もなく長かった)。
特に最終場面の人物の配置や台詞の演出や視線のやりとりは、映画の締めくくり方として正しいというか、やはり整ってる。

この映画に映っていたのはすべて、「正確に作用する偶然」というか、偶然ですらない、偶然のふりをした何かだった。総じて、この映画にリアルなところはまったくないと思う。
ロジエが本作でやったことは、偶然を装って女子3人組に接近したあの上司の男とまさに同じ。
純然たるフィクションに没入するという、映画が目指すべき到達地点の一つ。