「スパイ」
冒頭、木々の中の一台の車。
店外を掃除する亭主。
バイクで来た男、車から降りて来た男。覗き穴から覗く、寂れた病院、失語症の女、大金、ソ連情報局と合衆国情報局。
今、謎の男を巡る心理戦が始まる…
本作はユダヤ系作家であるE.ホストフスキーが亡命や家族をナチに殺害され、
あちこちに渡り様々な職につき、54年に発表した深夜の患者を巨匠クルーゾーが57年にフランスで撮ったスパイ映画の秀作で、
久々に鑑賞したが面白い。
まず物語はパリ郊外の精神病院を経営し、
患者は2人のみ、そんな彼に米国合衆国の心理戦研究所に勤務する大佐に取引を持ちかけられそれを承諾し、工作員、スパイ等がその病院に入り浸ることになる…とそこから展開される情報戦や正体を見破る戦術戦が行われ始める。
本作は比較的に彼の駄作と言われがちだが、
彼の従来のスタイルが多少なりともあるし、
アンバランスな(他国のスパイだらけ)設定に難解なあらすじが目立つのは確かだが、
それでもこの作家性には惚れ惚れする。
徹底した完璧主義のクルーゾーは本作でもかなり主義を爆発させたらしい…
にしてもスパイによるスパイだけのパーティーの様なわけ分からなくるプロットが多分、指摘され批判の的になったんだと思うが東西冷戦と諜報員を背景にしている映画は今でも人気で、
シャーリーズセロン主演のアトミックブロンド、ジェニファーローレンス主演のレッドスパロー等も近年では目立ったスパイ映画だ。
最後に余談だがトリュフォーは本作を鑑賞してクルーゾーに酷評したらしいが、
後に書簡を送り付けて賞賛したらしい他の作品等を…
そーいや本作の製作の翌年からヌーヴェルバーグの幕開けの時代にも入るんだな…。