この度、日本公開された邦題は『COME AS YOU ARE ~ありのままで~』
関東では柏のキネマ旬報シアターのみの公開なので観た人が少ないかもしれませんんが、隠れた名作の呼び声に恥じない作品でした。
あらすじとしては、三人の若い障碍者が「こんな俺たちでもセックスしたいぜ」とベルギーのブリュッセルからスペインにある障碍者専門の売春宿を目指す物語。
童貞喪失を描くコメディーにして切ない青春ロードムービーでもある訳です。
COME AS YOU AREと云うとニルバーナの曲を思い浮かべる世代ですが、この映画はそれとは何の関係もありません。
てっきり曲がそのまま使われているかと思ってました。
意訳すると「ありのままで来いよ」って意味でこれは劇中の三人の障碍者の友情関係を表す言葉なんだろうけど、そんなセリフありましたかね?
ただこの「ありのまま」の感覚ってのが彼ら障碍者にとってはいちいち行動を制限する不自由さに直結しているのが肝で作品の中でも笑いの要素になったり仲違いの原因になったりするので、重要なキーワードなんだと思います。
三者三様のキャラ設定も障碍の質も程度もそれぞれ違って当然性格もまるで違う。
もっとも重度な障碍だと思われるフィリップが一番性格に難があったりするのが笑えるポイントであると共に、そもそも障碍ってのは何ぞや的な問いかけが絶えずあるのが凄く良いです。
首から下がほぼ麻痺状態で電動車椅子でしか移動できない男がもっとも行動的で口が悪く喧嘩っ早いなんて面白すぎますよ。
それと旅を共にする介助人クロードの存在がとてもイイ。
青春映画における「良き理解者」であると同時に彼女自身が「苦悩する者」であることが三人の精神的成長を促す流れでグッときます。
障碍者を扱った映画というだけで身構えたりせずに『ポーキーズ』みたいなバカ映画観るつもりで観た方が正しいんじゃないかとも思えますが、ラストの胸をキューっと締め付けられるような切なさもあってこの映画の多層性をどう人に伝えればいいのかわかりません。
いや、本当に面白い。
関東圏の人は無理してでも柏に来て観る価値ありです。