KenzOasis

時計じかけのオレンジのKenzOasisのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
4.0
「I was cured alright」

ベートーベンの第九を愛し、ミルクバーでミルクを嗜み、暴力に明け暮れる青年が刑期と引き換えに受けることにした、新治療という名の洗脳の話。

のっけから驚きのシーンとかっこいいカットの連続で、独特という言葉だけでは足りない圧倒的な世界観に魅せられる。

アレックスの気狂いなコスチュームに対してスーツは美しいし、アレックスの家のビビッドなインテリア、前衛的すぎるミルクバーの造形、モダニズムの極致に達している作家フランクの家など、この美術は見事すぎるね。めっちゃカッコいい。

2度目のフランク家訪問のときに「雨に唄えば」を歌っているところを聞いてフランクが怒りにぶるぶる震える仕草とかすごかった。ブレイキング・バッドのヘクター・サラマンカはこれを参考にしてるのでは……とか思った。

ストーリーは難解、ということもないが多くを語らない。
自堕落かつ空虚でいて暴力的な、欲望に忠実な輩に対して、社会が対抗策として「洗脳」を選び、その被験者をさらに利用するという二次、三次の暴力が続く様と、最後の表情とセリフ。結局覚醒させてしまうという見事な皮肉。

カリスマ的でアーティスティックな風刺と言えばいいか。
キューブリックらしい、凄まじい映画だった。
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