きまぐれ熊

時計じかけのオレンジのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
3.8
ビジュアルは面白かったんだけど、傑作かと言われると今ひとつピンとこなかったな〜

そういう格調高い感じじゃなくって全般的にコントっぽいというか、強烈なブラックジョークって感じ
インモラルなテーマを表現するのに絵面を下品に落とさず濃密に描写してるのはお洒落
だけど、流石にアレックスが捕まるまで長くない?
捕まった後はサクサクで面白かったんだけど。

度々出てくる女性を襲うシーンも、舞踏みたいなステップでコミカルに描きつつ、クラシックをbgmとして流すのはブラックユーモアとして面白いんだけど、コメディとして振り切るのか露悪的に見せたいのかイマイチ判断付かなかった
これは時代の問題なんかな
クラシックの多用も露悪性をゴリ押し気味でどうもセンスある使い方にには見えなかった
笑っていいのか真剣なのか分かりづらいし

個人的に気になったのが大人のダブスタが多かったところ
被害者である作家は可哀相な存在ではあるんだけど、自由を勝ち取る為には大衆を煽動してやらねばならん!とか言ってて笑ってしまった
一行で矛盾してるじゃん

アレックスの両親もそう
出所後、治療に対しては肯定的な言動な上、面倒見切れないと家を追い出すのに、自殺騒動のあとはコロッと態度を反転させる
アレックス自体は本質変わってないのに

むしろ最も主張が一貫しているのが実は大臣で、始めから倫理観や動機なんてどうでもいい!犯罪抑止さえできればOKって言い切ってるんだよね
まあ犯罪抑止すらも建前な訳だけど、偽善を言わない分、筋は通ってはいるんだよな
反省させると反省文の書き方が上手くなるなんて本もあるくらいだし、従来の刑務に対する批判も一定の信憑性はあるのよね。ただ悪人だっただけで。

意図がつかみ切れなかったのはナッドサット語
どうしてこんな面倒な要素があるんだろうか
原作の著者が独自に作った若者言葉との事なので、若者言葉に普遍性を持たせた表現の為のアイディアなのかと思ったけどどうもピンとこない
何故なら若者だけが使うのかと思いきや、最初に襲ったおじさんが物乞いとして登場した時に使うんだよね
人間の野生とか悪性を表してるのかな

原作執筆の経緯が中々に強烈なんだけど、追加された21章の顛末を知ると、追加の経緯や内容と言い失笑するしかない
ますますこの映画をどう捉えていいか分かりかねるわ

面白かったは面白かったけど、傑作とか名作とか言われると今ひとつしっくりこない
ただカルト的に人気が出たってのは納得出来る
この作品から「タクシードライバー」が生まれて「ジョーカー」へと繋がっていくみたいなので、今度はタクシードライバーも観たい
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