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人間の條件 第1部純愛篇/第2部激怒篇のmajiziのレビュー・感想・評価

4.0
6部まである大長編。
1部2部は昭和18年満州から鉄鋼会社の労務管理の職につくため老虎鉱山へ主人公の梶が妻の美千子と向かう。
現場についた梶がみた現実は、中国人を奴隷のごとく働かせ、無茶なノルマを達成するため日本人たちの非人道的な振る舞いだった。

不条理な世界で梶はヒューマニズムを重んじる理想的な人間として描かれる。
もはや道徳も規則も存在しない戦時下では人間の欲望だけが前面に押し出され、良心や善意を覗かせた瞬間に駆逐される。

もちろん反戦映画なのだけれど、日本軍、日本人はこんなに中国人に対して酷いことをしたんですよという単純な内容ではない。戦時中に会社や軍、国という組織にいる限り、人間は人間であることは到底不可能だとわかる。

歴史や祖先たちを軽蔑するというのは簡単だしそんな理論は前提ですらない。人間はかくも醜悪で脆弱だと学んだとて、戦争は無くならないことを私達は知っている。戦争の恥ずべき歴史は国や人種に所属するのではなく、全ての動物の中で最も低俗で下劣な人間がもたらすというだけだ。

『人間の條件』などおそらく無い。知性や思想を持ったからと自分たちを高尚な生き物だと位置づけ何を勘違いしているのか。

そんなことを思うしんどい作品。
所々説教くさいし、全体的に暑苦しいんだけど今の邦画にはない圧倒的な熱量、スケール、役者たち。
この時代にこんな作品を撮るのはある種の執念と狂気がないと無理だと思う。

次の3部はいよいよ戦場へ。
絶望on絶望😖

みんな中国語頑張ってるのにたまに字幕が出ない部分があってそのあたりが雑。
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