新潟の映画野郎らりほう

僕と妻の1778の物語の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

僕と妻の1778の物語(2010年製作の映画)
3.0
【サイエンスフィクション/フィクション/ノンフィクションが重層するメタフィクションラブストーリー】


~『極論だが[恋愛]とは社会性を忘離した「自分達だけを想い合う男女」であり、非社会的で 非現実的意味合いを本来的に強く有している』~

出版形態を度外視した個人的小説。 妻の生命が夫とゆうフィルターを通過し 文字・小説へと変換されるSF的図式。 別世界の異邦人を見るかの様な病棟人々の宗教的暗示。
…作品には多くの非現実と非社会的モチーフが頻出している。
そして二人が旅先で辿り着く大樹…。 それは「理想郷」の具象であり、二人が社会から 自らの精神を遠く隔絶させた地平-心象世界-に到った事を示しているのだ。


だからこれはエッセイなんかじゃないのだ。 「エッセイを書く人-朔太郎-についての物語(メタフィクション)」なんだ。 では物語の真の書き手は何処だろうか?
私的解釈では、この世を離れ 理想郷(パラレルワールド)に住む二人が作品世界を俯瞰しており、主人公朔太郎もその事に気付いた(第三の壁の存在)からこそ 最後に原稿を空(海 つまりパラレルワールド)に放り「作品」を託したのだ。

恋愛に於ける精神昇華とSFの非現実性が同義透過し、フィクションとノンフィクションがどこまでも関連し続ける ~ 実に高密度且つ難解な構成だが、表層的にはそう思わせぬ巧みな単純化が施されており、平易広範な実話映画化作品としても屹立を果たしている。




《劇場観賞》