ハヤト

男はつらいよのハヤトのレビュー・感想・評価

男はつらいよ(1969年製作の映画)
3.9
寅さんの憎めなさは何なんだろう。
どうして放っておけないんだろう。
この映画は、寅さんを通して描かれる立川談志が言うところの「業の肯定」なのかしら。
人の気持ちも分かりゃしない、自分の事ばかり。でも身寄りのない奴を舎弟にして、情はある。いや、情しかない。インチキくさい仕事をしてるんだか、してないんだか。ふらっと20年ぶりに帰ってきておいちゃんおばちゃん家に転がり込んで厄介事を作っては怒られ、喧嘩をし、さくらの兄貴だからって威張って見合いは破談にする始末。
それでも柴又の人達の事だから人情がある訳で。寅さん寅さんと放っておかない。
義理の弟になるかもしれない人にも偉そうに恋だの愛だの説いてみるものの、いざ自分の番になると葛飾中の誰よりもぎこちないったらありゃしない。そこが良いのよね。
ヒロインの人の色っぽさもまた良いね。そりゃ寅さんも惚れる訳だ。自分が寅さんだったらきっと同じくぎこちなくなっちゃうだろうなぁ。
あの悲しそうな背中、忘れないよ。

映画が観終わったら、なんだか寅さんに会いたくなる。映画の登場人物なのにね。
寅さん、今はどこで何やってるんだろう。
ハヤト

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