ユーライ

トゥモロー・ワールドのユーライのレビュー・感想・評価

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)
5.0
再見。SFらしくない現代の延長線上にある猥雑な風景の中、「何故子供が生まれなくなったのか」理由を示さず人々に襲い掛かる不条理を淡々と長回しで処理し続ける。いつ暴力が発動するのか分からない異様な緊張感を観客は強いられ、固唾を呑んで見守ることしか出来ない。一時共にしたあの人もこの人もカメラの後方に追いやられ、その後どうなったのかは一切描かれない。だって我々が生きる現実もそういった圧倒的にミもフタもないものじゃんか。主人公から世界の全容は把握出来ず、誰と何が戦っているのかすら判然としない。この感覚はとてもしっくりくる。途中で「信念と運命」そのものズバリな話が出てくるように、ジョジョ5部と構造が似ている。死んでいた人間が覚悟を持って運命に挑み、命尽き果てるも残るものは残る。眠れる奴隷を解き放つことが出来た、それが勝利なんだ。映画どうこう以前に、とても美しい「物語」。爆撃でボロボロになったビルで微かに聞こえる赤子の鳴き声、皆が道を開け戦いを停止する。こういう奇跡のような瞬間のために映画を観ている。
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