ほーりー

明日は来らずのほーりーのレビュー・感想・評価

明日は来らず(1937年製作の映画)
4.3
三千世界のこの世の中で、親を思わぬ子はあれど、子をば思わぬ親はない。

という好きなフレーズがあるが、まさにそんなイメージなぴったりな映画がこの「明日は来らず」であります。

「我が道を往く」のレオ・マッケリー監督による隠れた名作。同じ1937年には「新婚道中記」でオスカーを受賞するのだが、本当はこっちで獲りたかったそうな。

また、小津監督の「東京物語」に影響を与えたとかでも知られている作品(でも何かの文献で実は小津さんはこの映画を観てないというのを読んだ記憶があるだが、その文献が何だったのか思い出せん笑)

銀行に家を抵当に差し押さえられ、家を出る羽目になった老夫婦は、5人の子供たち対してに同居させてくれないかと頼みこむ。

ところが、家が手狭だとか、お金がかかるとか、結婚相手が嫌がるとか、子供たちはブーブー文句を言い、結局、老いたる二人は別れてそれぞれの子どもたちの家に同居することになる…。

徐々に年寄りたちの退路を絶つかのような残酷なストーリーに胸つまる想いがする。本作は「東京物語」の原節子のような存在が誰もいないため、尚更救いがない。

ちなみに、うちの母方の祖母も似たような状況で、高齢になった祖母を誰の家で面倒をみるんだと母の兄妹間で話が揉めた。
結局はうちの母が介護することになり、そして祖母の最期を看取ったが、この映画を観ると、その時の思い出がフラッシュバックする。

映画に話を戻すが、主人公二人は遠方の場所に移り住むことが決まり、もう二度と会えないかもしれないと感じた夫婦は、新婚旅行で泊まったニューヨークのホテルに足を運ぶ。

思い出の場所で久しぶりの楽しい時間を過ごす二人の姿は感動的。

でもそれもほんの束の間。

やがて別れの汽車の時間が刻一刻と迫っていく。出発間際でのお互いの愛の告白が、温かくもあり、そして、悲しくてやりきれない感情を抱かせる。
ほーりー

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