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ミツバチのささやきのanemoneのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
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大きな瞳と、それを縁取る長いまつ毛
その目に映るものよりも、エリセは閉じた瞼の裏に浮かぶものを大切にしているのだと思う。

あの少女の眼差しを通して、何かを見ることはもうできない。
"エコール“のビアンカも、"ミツバチのささやき"のアナも、私は卒業してしまったのだと思い知らされた。

フランケンシュタインに殺されてしまう少女の名前はメアリーであり、作者のメアリー・シェリーと同じ。彼女は、悍ましい怪物に自分自身を投影していた。無垢な少女は、フランケンシュタインに逢いたかったのではなく、なりたかったのだと思う。水面に映るフランケンシュタインは、アナ自身。
焚き火を飛び越えるなど、刺激的な遊びを好む俗っぽいイザベルと、空想の世界に生きるアナ。2人は相反するようで、その危うさは背中合わせ。

岩井俊二監督に、「観た当時、こんな映画を撮りたい、と思ったものです。子供時代という迷宮。子供にしかない見えざる時計と地図。そんな世界が見事に描かれていました。」とインタビューで言わせた映画。

蜂蜜色に輝く光が部屋の中を照らす。
ゴヤの絵画のような書斎、黄色い壁にグリーンのベッドと赤い薔薇柄のベッドリネンの子供部屋、4つの連なる部屋を繋ぐ廊下、蜂の巣みたいな格子窓
ミツバチは、背中を金色に輝かせ美しかった。虫をあんなに美しいと思ったのは初めて。

スペイン内戦を描いた作品には、ファンタジーの世界と入り混じるものが多いけれど、子供達は幻想に逃げ込もうとしていたのか。
それとも戦争自体が巨大な怪物であり、ダークファンタジーだったのか。

落ち窪んだような、美しくも少し不穏なピアノと幻想的なフルートの音色、懐中時計の繊細なオルゴール
寓話の中に誘い込むような音楽も忘れられない。サントラが無いのが残念。


〜衣装語り〜
・白、ピンク、水色のスモッグワンピ、リボン、白ソックス、革靴、ミニボストン

・水色ストライプのフリル袖ワンピ(2連リボン、フリルポケット)+ワインレッドのニット、タイツ
淡い青の花柄エプロンワンピ(ラッフル襟)

・白いラッフルフリル襟ネグリジェ

・黒タートル+ペールグリーンジャンスカ+黒タイツ
レモンイエローのシャツ+ネイビーカーディガン+グレープリーツ

・ペールオレンジニット+ベージュジャンスカ
赤、黄、緑の花柄シャツ+グリーンのジャンスカ
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