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姿なき殺人のhorahukiのレビュー・感想・評価

姿なき殺人(1967年製作の映画)
3.9
愛をも上回る病的な興業への傾倒

9月は爺婆⑭

サーカスで連続殺人が発生したため、「死ぬとこが見れるかも?」とサーカスは連日大盛況。3年前に人を殺したことのある新人、毎度毎度のトラブルメーカー、被害者と争いがあった団員等々サーカス内は怪しい奴だらけ。そして殺人による客増加で絶賛大儲中の経営者モニカに疑いの目が向けられ始め…。

『血だらけの惨劇』に続くジョーンクロフォード主演のサイコスリラー。ストレートなイカれた婆ものではないけれど、良くそのジャンルで紹介されてるのを見かけるし、私が見たのは『血だらけの惨劇』と2in1な「psycho biddy features」なるBlu-rayだったし、このジャンルの作品と言ってしまって良いはず!

というかサーカスが普通にすんごいし本気過ぎ!横たわる6人の美女の隙間を象が足をプルプルさせながらゆっく〜り通るやつがあるんだけど、普通に「おお〜!」って声出た。スムーズにスタスタ行くんじゃなくて、ゆっくり慎重に一歩一歩足プルプルさせながら…ってのがマジで怖い!こんなの生きた心地しないし、踏まれる前に恐怖で死んじゃいそう…😱

他にも美女磔にしての回転ナイフ投げとか、目隠し自転車綱渡りとかもマジ凄い!ワンちゃんたちが追いかけっこみたいに全力疾走してるやつは可愛かった!あと、ちょっとだけ『グレイテストショーマン』みもあった。

序盤から「非人間的だ」と罵られるモニカ(ジョーンクロフォード)は、愛や情よりも事業を優先し、恋仲にある男でも事業に邪魔であれば簡単に切り捨てるタイプ。家族すらも蔑ろにし、学校で非行を働く娘のことで教師がモニカに相談しようにもサーカスは常に移動してるから連絡の取りようがなく放置される。過去に夫が誰かに殺害され、恋仲にあった爺も今回の殺人騒動で殺される…。だから矛先がモニカに向けられ始める…といった流れ。

窃視的なカメラからスムーズな主体(客体)の変更を絡ませ、最終的に窃視的カメラを逆転して反復する殺人シークエンスの外連味が素晴らしい。フーダニットなミステリでありながら、ミステリを自ら放棄する姿勢はどこかジャーロ的。物影なり穴なりから「覗く」行為が殺害する客体ではなく、とあるキャラへの「隠された想い故の視線」へと自然と転嫁されるのも自覚をもって演出しているからこそ。だからクライマックスでは「覗く」→「開け放つ」になるわけで、当該キャラへの心情の吐露的で、かつ「自分を見て!」的ネタバラシへと繋がる。そういうとこも含めてやり口が極めてジャーロ的で好み。というかもう完全に英産ジャーロ。

巨大なサーカスの物量で、トレーラーなり何なりが大量に並ぶ会場が簡易的な街並みのようにも映る。その合間を縫うように自室へと急ぐ者の背後から、反射して大きくなる影が跡をつけるシークエンスも素晴らしく、自身の疑心・恐怖心と影の肥大化を意識的にリンクさせた良い演出だと思う。

あのラストが批判される最も大きな理由なんだろうと思うけど、本作のようなジャーロ的アプローチであればああならざるを得ないよね。私は真っ当なラストだと思う。でも見てる時は焦った!だってもう終わりまで10分切ってるのに犯人わかんない、というか捜査も全く進展してない、画面では普通にサーカスしてるだけ…。全く何の着地点も見えなくて、決着つかないのかと思った😂
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