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クラバートのhorahukiのレビュー・感想・評価

クラバート(1977年製作の映画)
3.8
「人間」になりたい!

12月はクリスマス⑧

貧困で放蕩生活をしている主人公がカラスに誘われやってきた水車小屋は魔術学校だった!そこでは衣食住は確保できるけれど奴隷のような生活を強いられる。そして年に一度、クリスマスに年長者が決闘の名の下に親方(魔術学校のボス)によって処刑される。逃げ出したくなった主人公は…。

初カレルゼマン。原作がプラスウラーの『Krabat』という小説らしいのだけど、それは『千と千聖の神隠し』の元ネタでもあるらしい。そう言われると確かに大筋がそっくり。『千と千尋…』の豚の選別に近いこともやってたし、社畜ムービーでもあったし、カラスに変身するし、主要キャラ以外は色が褪せた無個性に近い描かれ方をしているのも似てた。そして愛という最強の魔術で成長するあたりも。

カレルゼマンと言えば実写とアニメーションの融合のイメージだったのだけど、本作ではほとんどが純粋なアニメーション。切り絵のような紙の切り抜きの組み合わせで紡いでいきながらも、時折、水の動き等に実写が合わさるのが独特。そして静止した背景のもと同じフレームの中で動く要素を極端に減らした作風が現実離れした神話的世界観を構築している。

魔術学校を活かしたサブプロットも面白く、ボスのもと魔術を習う弟子たちは仲間を牛に変身させて金持ちに売りつけ、しばらくしたら牛がそのまま走って戻ってくるという詐欺で大儲け。ゴミを宝石に変えて金持ちに売り飛ばしたりとやりたい放題。全部ボスの命令なんだけど悪どい!そういえば『千と千尋の神隠し』でも似たようなことやってたよね。

一番笑ったのは、主人公クラバートが囚われてたお偉いさんを救うために馬に変身させて逃すのだけど、クラバートがちゃっかりお偉いさん(馬)に乗って逃げるところ。そんで、別の大事な用事ができたってんでお偉いさん(馬)を乗り捨てて飛んで帰るところ。当然ひとりで馬から人間に戻ることなんてできないわけで、「彼は一生草を食って生きなければならなくなったけど、捕虜よりはええやろ」的な一言であっさり終わらせるクラバートさんの鬼畜っぷりが凄まじかった。

そんなクラバートさんが愛は最強の魔術!とか言って終わらせるんだけど、是非その愛とやらでお偉いさんも助けてあげて欲しいところ。一生草食って生きるとか地獄だわ。というかクラバートさんのその言い方自体が何なら馬になったお偉いさんバカにしてるよね🤣そこを含めて批判的意味合いを込めてるんだけど、色々笑えて面白かった!
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