タカ

エクソシスト/ディレクターズ・カット版のタカのレビュー・感想・評価

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「悪魔祓いがなぜ悪いの!?なぜなの!?」

悪魔映画の決定版であり、不世出の映画
いかに映像技術が発達しようとも、時代の移ろいに沿って人間の価値観が変わろうとも
普遍的な人間心理を突き、ケレン味溢れる恐怖描写でインパクト満点の社会現象を巻き起こした今作を超えることはないだろう
死ぬまでに映画館で鑑賞できて心底良かった
悪魔的に完成された映画だ

冒頭のイラクでの採掘シーン
始まりからして不穏しかない
耳馴染みのない民族音楽が流れながら、メリン神父の様子が映される
そもそも初めて出てきたキャラクターの体調が明らかに芳しくない時点で不安を煽る
地元民の表情のアップ、銃を突きつける警備員、盛り立った犬の喧嘩
断片的に何か嫌な予感を感じさせるのが良い
多くが語られず引っかかりがある始まり
ここで映画全体の重苦しいトーンを示している気がする

精神医学と超自然
言わずもがな悪魔祓いは超自然現象に対するアプローチなのだが、対象が人間である以上は医学に紐付いた理論づけが出来る
「医学が発達して悪魔は居なくなった」というニュアンスの言葉が劇中でもあるように、悪魔憑きは医学的に解消できるというのが大方の認識
なぜならばそれは精神的問題であるから
ということである
悪魔映画ではやはりこの辺りを言及するのが基本的なのかも
今年公開のヴァチクソでも冒頭でそのあたり言及される
しかし、学問では制御しきれないのが"超自然"
その脅威に対峙しないといけないのがたまらなく怖い
今回再鑑賞してカラス神父が精神科医であることを初めて認識した
仕事上・家庭上の両面から信仰心を失いつつある彼が悪魔祓いを通してその揺らぎに向き合うことを余儀なくされる
どうもインパクトシーンに目がいきがちだけども、なかなか身の詰まったドラマだと思う

恐怖演出に関しては、ともすれば笑いが起こってしまうシーンの連続
首の回転、階段スパイダーウォーク、勢い良すぎる嘔吐、空中浮遊
実際、お笑い的にオマージュされることも数多く見てきた
だけど鑑賞中に笑いを起こさせないのは前述した映画全体を通したトーンの徹底かと思う
公開当時は鑑賞途中で失神する者が現れたり途中退出する人が続出したという逸話がある
こういうインパクト絶大シーンでの出来事かとてっきり思っていたのだが、メイキングを見る限りではどうやら途中にある病院における検査シーンが原因の一つだったらしい
たしかに小さい頃に初めて鑑賞した時、あのくだり嫌だったなぁというのを思い出した
首元に刺した注射から血がピューと吹き出すのが、印象深い

劇場鑑賞は貴重な体験
定期的に上映してほしいなー
タカ

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