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昨日と明日の間のseapony3000のレビュー・感想・評価

昨日と明日の間(1954年製作の映画)
5.0
メロドラマとしては「餓える魂」には凡そ達しない微妙な出来ではあるけれど。よろめき女王・月丘夢路の安定感と、煌めくパッションで一人勝ちともいえるヤンキー女・淡島千景に押されまくって、主演のはずの鶴田浩二の軸がいっさい霞んでみえてこないのが酷いけどなんだか面白い(役名は白戸魁太郎)スクリーンの裏側になってる大木実の事務所裏で宝塚の先輩後輩同士の夢路と千景さんが、まさに宝塚ステージの映画を背景にバチバチの闘い、果てはオーバーオール姿の千景は埠頭に夢路呼び出してビンタ。恋愛上級生の夢路の女の意地もビンビンに尖る。「従業員に女?アクセサリー程度ならいいかもな」のセリフが表すように舐めてますなんやかんやで女を愛することなど到底無理なわりに仕事の合間に女に振り回されて、苦労する前になにかを成し遂げた気になってさっさと仕事を乗り換える夢を抱く男・鶴田浩二おめーいい加減にしろ、なんだけど、寝てる鶴さんの耳たぶに注射(ペイやってんのか…)の針刺して起こすところから、「てんやわんや」の素晴らしさを越えてくるようなダンス、そしてまさかの仁義切り…過剰に異常だけれどすごいよ淡島千景。航空会社からサルベージ事業へ、煙草も吸い終わってさらに流離う鶴さんと、いまだよろめく正統派の夢路を見届けるように、あの場所でこの映画自体が終わるメタ演出が冒頭から戻ってくる。それを見据える淡島千景の表情がすべて。みんなみんな昨日の人になっちまったんだ。あまりにも素晴らしい淡島千景に花束を。
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