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グラン・トリノのkuuのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.0
『グラン・トリノ』
原題 Gran Torino.
製作年 2008年。上映時間 117分。
アカデミー作品賞受賞作『ミリオンダラー・ベイビー』以来4年ぶりとなるクリント・イーストウッド監督・主演作。

朝鮮戦争の従軍経験を持つ元自動車工ウォルト・コワルスキーは、妻に先立たれ、愛車“グラン・トリノ”や愛犬と孤独に暮らすだけの日々を送っていた。
そんな彼の隣家にモン族の少年タオの一家が越してくる。
ある事件をきっかけにして心を通わせ始めたウォルトとタオだったが、タオを仲間に引き入れようとする不良グループが2人の関係を脅かし始め。。。

。。。ジージージー
デトロイトで無差別狙撃事件が発生。
犯人は武装団。
100万ドルを支払わなければ、無差別に人を殺ると通告してきた。
殺人課の刑事ハリー・キャラハンは必死の捜査の果てにトリノと名乗る犯人を追い詰め・・・
※って流れやじゃ全くないので。

改めまして、今作品はダーティハリー見たいな劇的な物語じゃない。
けど、個人的には魅了されました。
話は、50年間デトロイトのフォード自動車工場を勤め上げたポーランド系アメリカ人stubborn(頑固者)ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、むちゃくちゃ惚れた奥さんを亡くして以来、誰にも心を開かんようになった。
朝鮮戦争帰還兵やから故に、デトロイトに暮らす東洋人を馬鹿にしてる。
グラン・トリノ(アメ車で1968年から1976年に生産された、フォードの車種フォード・トリノの名称かな)だけを誇りにして隠居しとる。
奥さんと仲良かった神父の懺悔なんかにも応じず追い返すstubborn.
そんなある日、隣に住むモン族(モン族は日本人はよく似とって、以前小生も何度も間違われた事がある。最近は韓国の方と間違われる)のタオが、不良達にそそのかされて愛車のグラン・トリノをパクろうと(盗もうと)するけど、コワルスキーは追い返し、これをきっかけにタオと知り合いになる。
タオ姉であるスーに感謝感激雨嵐され、ホームパーティーに招かれる。
ウォルトは次第に人との繋がりを感じ、タオ達一家を気にかるようになる。
得てして、頑固ジジイって付き合えば根はいいひと多い。
どうやったらイーストウッドはこない傑作次からつぎへと生み出せんのかなぁ。
頭ん中観てみたい。
イーストウッドが演じとるウォルトは、典型的な白人至上主義的(一歩間違えばKKKやっても可笑しない)朝鮮戦争の帰還兵の頑固オヤジ。
隣人のアジア系であるモン族の家族を毛嫌いし、自身がフォードで働いていたこともあるさかい、笑えるようで笑えへん。
息子が日本のトヨタで働いてっこともムカついて、息子家族とは険悪な関係で、愛する奥さんを亡くし、愛犬のデイジー、72年製のフォード車グラン・トリノだけが拠り所、孤独やなぁって思える余生を過ごしとる。
俳優として最後となるって云っとったはずだけある本作イーストウッドが演じとった全ての映画が詰まっとる感じやし。
まぁそのあとも作品は送り出してるが。
翌年には『インビクタス/負けざる者たち』から昨年『クライ・マッチョ』まで。
ファンとしてはうれしいかな。
今作品が名作って感じるのは、それなりに深いテーマがあるん当たり前田のクラッカー(古っ)やけど、そのテーマ前に、イーストウッドというクリスチャンの生き様を観るっことできる。
メチャクチャいい映画でした。
『ダーティハリー』みたいにチャカを構える姿をしてみたり、『ミリオンダラー・ベイビー』みたいに過去の何かに贖罪を求めとったり、イーストウッド自身も朝鮮戦争で陸軍に従軍してたみたいやし、戦争後遺症が『父親たちの星条旗』とは違った観点で、同様のメッセージ性を持って描いとる。
イーストウッドを端的に述べるなら、過去の映画を一杯あげるよか、グラン・トリノ一本でも語れそうな映画やと思うし、今作品はマジ深いテーマを秘めとる。
それって宗教や哲学での永遠のテーマの死生観であったり、
生きざまやったり死にざまやったり、
過去、未来、現在(仏教では三世)やったり、
贖罪やったり、世代交代やったり、そして、捉え方如何によっちゃ色んな見方が出来る。
偏屈ジジイと異国のガキを通して、それらのテーマが巧く絡み合い描かれてます。
共通点のないようなこの二人が、"孤独"と云う意味で、『自分と同じ』と思えたのかもしれへん。素晴らしいし、小生が学ばなきゃならない、復讐が復讐を生まないある行動を頑固ジジイが取るんやけど、この行動こそが、イーストウッドの俳優業引退宣言ちゃうんかな。
ダーティハリーを永遠に眠らせ、十字の形で倒れるウォルトはキリストを、キリストの死によって罪が赦される新約聖書における贖罪を意味ってかんじで連想して描いたんちゃうかな。
ウォルトの意を受けたタオは、ウグラン・トリノ(70年代アメリカのメタファー)に乗り、バックで流れるのはグラン・トリノという曲。 
これは、オバマという初の黒人大統領の新政権に湧いたアメリカの、それこそ"Change, yes,we can"いつの日かそのようになるときが来るやろう。
そんなに簡単な事とちゃうと知りながら問題を直視しながら、物事をポジティブにとらえてベストをつくしていくのが成功者やとの意味も篭められてるんちゃうかなぁと。
善き作品の一本でした。
kuu

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